ケモカイン

内科学 第10版 「ケモカイン」の解説

ケモカイン(アレルギーに関与する細胞・分子)

(7)ケモカイン
 IL-8の発見を皮切りに,細胞遊走活性を主体とする比較的分子量の小さいサイトカインが50種近く判明しており,ケモカインと総称される.その構造から,CXC,CC,CX3C,Cの4種類に大別され,その多くは前2者に属する.ケモカイン受容体も約20種類が存在し,各受容体は1~数種類のケモカインと結合する.細胞種ごとにケモカイン受容体発現プロフィールが異なることが,病態における細胞選択的な集積に関与していると考えられている.例として,好酸球,好塩基球において特に発現が強いケモカイン受容体CCR3は,eotaxin(CCL11)やRANTES(CCL5)をはじめとするアレルギー関連のケモカイン数種類の受容体である.喘息の気道粘膜においては,CCL5,CCL11のほかに,MCP-1(CCL2),MCP-3(CCL7),MCP-4(CCL13)といった種々のケモカインの産生がみられる.肺局所に抗原暴露を行うと,CCR2およびCCR3を発現する好酸球・好塩基球の組織流入が起こる.さらに,これらの細胞自体からのケモカイン産生,Th2サイトカインIL-4による種々の細胞からのケモカイン産生の増強,受容体発現の増加も起こり,炎症を複雑にしている.これらのうち,特に重要な受容体を標的とする治療が試され,臨床効果が解明されることが期待される.[山口正雄]
■文献
Barnes PJ: New therapies for asthma: is there any progress? Trends Pharmacol Sci, 31: 335-343, 2010.
Hsu FI, Boyce JA: Biology of mast cells and their mediators. In: Allergy: Principles and Practice, 7th ed (Adkinson NF Jr, Bochner BS, et al eds), pp311-328, Mosby, Philadelphia, 2009.
羅 智靖:マスト細胞:感染防御の最前線からアレルギーまで.アレルギー病学(山本一彦編),p55-63,朝倉書店,2002.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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