バルーチ族(読み)バルーチぞく(英語表記)Balūch

改訂新版 世界大百科事典 「バルーチ族」の意味・わかりやすい解説

バルーチ族 (バルーチぞく)
Balūch

イラン系の言語を母語とする遊牧部族。現在,パキスタン南西部,イラン南東部,アフガニスタン北西部,トルクメニスタンに分かれて居住する。全人口は200万人以上(1970年代の推定)いるが,その60%はパキスタンに住む。俗にバルーチスターンといわれる現在の居住地は,この部族の原郷でなく,もともとはイランのケルマーン地方にいたとされる。セルジューク朝がこの地方に侵入したのに伴い,東進を開始し,マクラーンを経て,シンド,パンジャーブに進出した。17世紀になってドラビダ系の血もはいっているブラホーイー連合によってバルーチ族自身の地方政権がカラートを政治の中心にして初めてつくられた。しかし,この政権は1839年に第1次アフガン戦争によってイギリスの進駐を許し,54年,英領インドの保護国,72年にはイギリスの主導でイランとの国境線が決められ,民族を分断された。このあと国境東部に住むバルーチは英領インド,次いで1947年のパキスタン建国に伴ってその国民になった。国境西部に住むイランのバルーチ族は1930年代におけるレザー・シャーの定住化政策によってその生活様式,民族の主体性を弱められた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android