改訂新版 世界大百科事典 「マクラーン」の意味・わかりやすい解説
マクラーン
Makrān
パキスタンとイランにまたがるアラビア海岸沿いの山岳地帯名。イラン側はメクラーンMekrānという。東西方向に並走する数条の第三紀褶曲山脈列とその間の狭長な河谷平野,および海岸部の小平野からなる。海岸部のパスニの年降水量は127mmにすぎず,砂漠気候に属する。農業は,地下水路(カナート)灌漑,また冬の降雨時の氾濫によりできたワジ中の水たまりの揚水式水路灌漑に依存し,ナツメヤシ,小麦,大麦を産する。とくにナツメヤシの乾果は良質で西アジアでも有名である。海岸部では漁業が発達しつつあり,干魚に加工してインド,西アジア諸国に輸出される。西アジアとインド亜大陸とを結ぶ回廊として重要で,古代ギリシア人にもゲドロシアGedrōsiaとして知られていた。イギリスは1862年以降のインド・ヨーロッパ直通電話回線建設のときからここに注目し,現在のパキスタン領の範域を77年に保護領化した。以後,1947年のパキスタンの独立までこの地域は主としてカラート藩王国領であった。
執筆者:応地 利明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報