内科学 第10版 「先天性小腸閉鎖症」の解説
先天性小腸閉鎖症(先天性腸疾患)
概念
胎生期における消化管の虚血,壊死により消化管の一部が消失しその口側および肛門側で消化管の閉鎖を生じ,通過障害をきたすという説と,胎生8~10週に完成する腸管のrecanalizationの障害によるとする説がある.その閉鎖部位により十二指腸閉鎖,空腸閉鎖および回腸閉鎖に分類され,また閉鎖の形態により離断型閉鎖と膜様閉鎖に分類される.
1)先天性十二指腸閉鎖症:
多くはVater乳頭部付近で十二指腸が閉鎖されるもので,膜様閉鎖,離断型閉鎖のほかに,輪状膵による閉鎖もみられる.胎児エコーによる出生前診断が可能であり,出生後のX線所見では特徴的なdouble bubble サイン(図8-5-8)によって診断が下される.出生5000~10000に対して1例の発生があり,約半数に合併奇形があり,Down症の合併が多く,さらに胆道系の合併奇形,十二指腸前門脈,腸回転異常,心大血管異常,食道閉鎖症,直腸肛門奇形などの合併が報告されている.羊水過多が約半数にみられる.
手術法には膜様閉鎖に対する膜切除ならびに腸管縫合と,輪状膵や離断型閉鎖に対するダイヤモンド吻合法がある.膜様閉鎖の特殊型としてwind sock型があり,手術に際して注意が必要である.
■文献
Kimura K, Mukohara N, et al: Diamond-shaped anastomosis for duodenal atresia; an experience with 44 patients over 15 years. J Pediatr Surg, 21: 1133-1136, 1986.[森川康英]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報