分光増感
ブンコウゾウカン
spectral sensitization
光化学変化,光物性変化などで,添加または吸着した物質の吸収光により,目的とする変化が起こるとき,この現象を分光増感または光学増感という.銀塩写真の感光波長域を拡大するなど重要な応用面をもつ.この目的にはシアニン色素,メロシアニン色素などが用いられることが多く,色素増感,色増感の呼称が用いられる.ハロゲン化銀は青色光および紫色光にしか感度をもたないため,緑色光,赤色光,赤外光に対して感度をもたせるために色素をハロゲン化銀粒子に吸着させる.吸着色素の光吸収により励起された電子がハロゲン化銀の伝導帯に注入され,潜像が形成される.これによって可視光の全域に感度をもたせることができ,カラー写真が可能になる.分光増感色素に別の色素などを少量加えることにより感度が上がることがあり,強色増感といわれる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
世界大百科事典(旧版)内の分光増感の言及
【写真乳剤】より
…写真乳剤はゼラチン水溶液中で,水溶性銀塩(例えば硝酸銀)と水溶性ハロゲン化アルカリ(例えば臭化カリウム)の複分解によりハロゲン化銀微粒子を形成して調製する。写真感度を高めるために,種々の増感法(通常は化学増感と分光増感)が乳剤に施される。化学増感は,乳剤に増感剤を添加して加熱かくはんすることにより粒子表面に微量の不純物を導入し,感光波長域を変えずに写真感度を増加させるために用いられる。…
【増感】より
…ちなみに,銀板の感度は現在のISO感度で表すと0.01程度と推定される。写真感光材料の感度は図に示すように年代とともに高くなっているが,これは技術的には現像法の発明,臭化銀ゼラチン乳剤の発明,分光増感技術,化学増感技術,乳剤技術の進歩に負っている。1983年にはISO1000のカラーネガフィルムが発売され,また拡散転写法のインスタントフォトグラフィーではISO20000の黒白感光材料も市販されているので,銀板写真と比べると写真感光材料の感度は105倍も高くなっている。…
【増感色素】より
…写真乳剤にある種の色素を加えると乳剤が長波長の光にも感光するようになることは,1873年ドイツのフォーゲルHermann Wilhelm Vogel(1834‐98)によって発見された。このようにして乳剤の感光する色光の領域を広げることを分光増感,あるいはスペクトル増感spectral sensitizationというが,分光増感の発見によって青から黄の色光に感ずるオルソ乾板,オルソフィルム,また可視域全般に感ずるパンクロ材料が製造されるようになった。 写真乳剤の分光増感に使われる色素でもっとも重要なものはシアニン色素である。…
※「分光増感」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」