日本大百科全書(ニッポニカ) 「回回礮」の意味・わかりやすい解説
回回礮
かいかいほう
中国、元(げん)の世祖フビライ・ハンのとき、ペルシア人技術者アラー・ウッディーン‘Alā al-Dīn(阿老亙丁、?―1312)とイスマーイールIsmā‘īl(亦思馬因、?―1330)が製作した投石機。元軍の襄陽(じょうよう)城攻略(1272~73)で初めて使われたので襄陽砲ともいう。従来の中国式投石器が、高いシーソーの一端にのせた弾丸を、他端を人力で一気に引き下げることによって飛ばすのに対し、このイスラム式のものは、弾丸をのせた一端を人力で引き下げておいて手を放し、重い錘(おもり)のついた他端が落下する勢いによって弾丸を飛ばす「はねつるべ」式で、ゆっくり引き下げられるから少人数で威力のあるものが操作でき、150斤(約90キログラム)の弾丸が地下7尺(約2.1メートル)まで陥入したという。
[宮島一彦]
『吉田光邦著『中国科学技術史論集』(1972・日本放送出版協会)』