多重防護(読み)たじゅうぼうご

知恵蔵 「多重防護」の解説

多重防護

原子炉の安全確保のために多重の安全対策が施されていることをいう。まず異常発生の防止、次いで異常が起きればその早期検出・拡大防止ができるように設計しておくこと。第1段階の異常発生防止では、原子炉に固有の安全性を持たせたり、誤動作・誤操作が起きにくいよう機器の信頼性を高めたりする。また、定期検査・運転操作などそれぞれの段階においてきめ細かい管理体制がとられる。それでも異常が起きたときには、第2段階として、異常をキャッチする監視装置と拡大防止のための安全装置を備える。この装置は、原子炉の安全を損なったり、その恐れがある異常が生じると警報を出したり、原子炉緊急停止(スクラム)と緊急炉心冷却装置起動を指示する信号を自動的に出したりする。万一圧力容器配管から放射能が漏れても、格納容器で放射能を封じ込める。放射性物質の封じ込め役を果たすのは、燃料を焼き固めたペレットに始まり、それを収めた燃料棒被覆管、圧力容器、格納容器、原子炉建屋の5つの障壁である。

(渥美好司 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多重防護」の意味・わかりやすい解説

多重防護
たじゅうぼうご
defence in depth

原子炉,核燃料サイクル施設放射性廃棄物の地層処分場などの原子力施設の安全性を確保するため,安全対策を多段的に設計すること,またその考え方。深層防護ともいう。万が一不測の事態が発生しても最悪の事態にいたらないように,互いに独立した複数安全策を講ずること。原子炉においては,格納容器や原子炉建物など複数の構造物で,事故時に放射性物質が外部環境へ放出されるのを防いでいる。また機器,計装の多重多系列化,フェイルセーフ,フェイルプルーフ設計が行なわれる。

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