… しかし,その後は,アメリカ資本の進出に押され,とくに1968年の〈五月革命〉以後は,映画助成金制度の〈民主化〉によって新人監督にデビューのチャンスがいっそう大幅に与えられるようになったものの,そのぶんだけ作品も小粒になり,粗製濫造ぎみになった。〈ラジカルに政治化〉した反商業主義映画(ジャン・リュック・ゴダールとジガ・ベルトフ集団による〈革命的闘争映画〉)もあれば,〈国民的喜劇王〉ルイ・ド・フュネスの映画(《大追跡》1964,《大進撃》1966)が大ヒットし,コスタ・ガブラスConstintin Costa‐Gavras監督《Z》(1968),イブ・ブワッセ監督《暴行》(1972)といった〈政治サスペンス映画〉も流行する。次いで占領時代への回顧ブームに乗って〈ノスタルジー映画〉(マルセル・オフュルス監督《悲しみと憐れみ》1969,ルイ・マル監督《ルシアンの青春》1973,等々)が流行,また74年にはジスカール・デスタン大統領,ミシェル・ギー文化相の下で映画検閲が撤廃されて〈ポルノの自由化〉が急激に進み,《エマニエル夫人》(1974)のロング・ヒット,〈ハードコア〉のポルノ映画のブーム,そして70年代末から80年代初めにかけてはジャン・ポール・ベルモンドのコミカルなアクション映画(《警部》1979,等々)の未曾有のヒットやゴダールの商業映画への復帰(《カルメンという名の女》1983)が評判になったが,その間にフランス映画は完全に国際性を失ってしまった観がある。…
※「大追跡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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