巨旦将来(読み)こたんしょうらい

精選版 日本国語大辞典 「巨旦将来」の意味・読み・例文・類語

こたん‐しょうらい ‥シャウライ【巨旦将来】

「備後風土記」などに見える伝説上の人物蘇民将来(そみんしょうらい)の弟。富者であったが武塔(むとう)の神(素戔嗚尊)に乞われた宿を断ったために没落したという。
※二十二社註式(1540‐73頃か)「兄蘇民将来云、甚貧窮、弟巨旦将来云、富饒屋舎一百在

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世界大百科事典(旧版)内の巨旦将来の言及

【祇園信仰】より

…牛頭天王については天竺(てんじく)(インド)の祇園精舎(ぎおんしようじや)の守護神とする説をはじめ諸説があるが,要するに疫病流行など不慮の災厄にさいなまれつづけた古代の人々が,既往の信仰・伝説とも結び合わせながら信仰の対象として育成した神格である。この神は別に〈武塔神(むとうしん)〉の名をもつが,それは《備後国風土記逸文》にみえる〈蘇民将来(そみんしようらい)〉と〈巨旦将来(こたんしようらい)〉という兄弟の伝説にもとづく。すなわち,一夜の宿をもとめた武塔神を,富裕な弟の巨旦はことわったが,貧しい兄の蘇民は粟柄(あわがら)を敷いて座席をしつらえ,粟飯を献じて心から歓待した。…

【蘇民将来】より

…蘇民将来には,紙や板の札に〈蘇民将来子孫之門〉とか〈蘇民将来子孫繁昌也〉と書いて,家の戸口に貼って魔よけとしたり,畑に立てて虫よけとする風もある。《備後国風土記》逸文には,旅に出た武塔神(素戔嗚(すさのお)尊)が宿を請うたところ,富裕な弟の巨旦(こたん)将来はことわったが,貧しい兄の蘇民将来は宿にとめ歓待したため,茅の輪(ちのわ)の護符を腰につけるように教えられ疾病を免れたと語られている。この説話は旧暦6月の夏越(なごし)祭の茅の輪行事の由来譚ともなっているが,同様なモティーフは猟師の間で伝えられる磐司磐三郎譚などの兄弟譚にもみられる。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」