精選版 日本国語大辞典 「蘇民将来」の意味・読み・例文・類語
そみん‐しょうらい ‥シャウライ【蘇民将来】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
説話の主人公の名、転じて護符の一種。『備後国風土記(びんごのくにふどき)』逸文によると、須佐雄神(すさのおのかみ)が一夜の宿を借りようとして、裕福な弟の巨旦(こたん)将来に断られ、貧しい兄の蘇民将来には迎えられて粟飯(あわめし)などを御馳走(ごちそう)になった。そこでそのお礼にと、「蘇民将来之(の)子孫」といって茅(ち)の輪(わ)を腰に着けていれば厄病を免れることができると告げた。はたして、まもなくみんな死んでしまったが、その教えのとおりにした蘇民将来の娘は命を助かったという。民俗ではこの神は祇園牛頭(ぎおんごず)天王とも習合しており、八角柱の木片に「蘇民将来之子孫也(なり)」などと書いた護符の類を蘇民将来といっている。伊勢(いせ)地方などでは家の門口に「蘇民将来之子孫」などと書いた注連(しめ)をかけて災厄除(よ)けとしている例も多く、また岩手県奥州(おうしゅう)市水沢(みずさわ)区の黒石寺で旧正月7日に人々が裸で蘇民袋を奪い合う蘇民祭などもよく知られている。
[新谷尚紀]
『『備後国風土記』逸文(『日本古典文学大系2 風土記』所収・1958・岩波書店)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…牛頭天王については天竺(てんじく)(インド)の祇園精舎(ぎおんしようじや)の守護神とする説をはじめ諸説があるが,要するに疫病流行など不慮の災厄にさいなまれつづけた古代の人々が,既往の信仰・伝説とも結び合わせながら信仰の対象として育成した神格である。この神は別に〈武塔神(むとうしん)〉の名をもつが,それは《備後国風土記逸文》にみえる〈蘇民将来(そみんしようらい)〉と〈巨旦将来(こたんしようらい)〉という兄弟の伝説にもとづく。すなわち,一夜の宿をもとめた武塔神を,富裕な弟の巨旦はことわったが,貧しい兄の蘇民は粟柄(あわがら)を敷いて座席をしつらえ,粟飯を献じて心から歓待した。…
…《簠簋(ほき)内伝》によると天界にあった天刑星が,地上に降りて,牛頭天王と名のり,南海に赴く。途中,巨旦(こたん)大王に宿を求め,断られるが,貧しい蘇民将来(そみんしようらい)の宿で丁重にもてなされる。牛頭天王は,やがて南海の竜王の娘頗梨采女(はりさいによ)を妻にもらい,8人の王子が誕生する。…
…厄病神歓待の風習は,ある意味で盆の無縁仏や餓鬼仏を精霊とは別にまつる風に対応するものともいえる。厄病や疱瘡よけのため,〈鎮西八郎為朝御宿〉といった武将の名のほか,〈蘇民将来(そみんしようらい)子孫也〉とか仁賀保金七郎,小浜六郎左衛門,釣船清次など,厄神を助けたり泊めたりしたという者の名前を記して戸口にはっておく風習もある。厄病を免れる,または軽くするという旨の〈疫神のわび証文〉や〈疫神退散状〉も各地に伝えられている。…
※「蘇民将来」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
9/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新