悪性腎硬化症

内科学 第10版 「悪性腎硬化症」の解説

悪性腎硬化症(腎と血管障害)

概念
 悪性高血圧に伴う腎病変に対する呼称である.
病因・病態生理
 急激かつ高度な血圧上昇のため輸入細動脈が過剰に収縮し,内皮傷害も伴って腎血流量が著減する.その結果,レニン-アンジオテンシン(RA)系が亢進し,さらに高血圧を助長させる悪循環に陥る.輸入細動脈の収縮によって腎実質自体は全身高血圧から保護されているので,早期に全身血圧をコントロールできれば腎機能障害は可逆性である.
病理
 輸入細動脈のフィブリノイド壊死を伴う細胞浸潤が主体で,病理学的には血管炎と区別できない.細動脈の同心円状の層状求心性肥厚はonion peal appearanceとよばれ特徴的である.
臨床症状
 急激で著しい血圧上昇(拡張期圧130 mmHg以上)で発症し,乳頭浮腫とともに出血,白斑など多彩な眼底変化,急速に進行する腎機能障害を特徴とする.検尿異常は高度で,ネフローゼ症候群を呈することもある.中枢神経症状,心不全を伴い致命的なこともある.血管内凝固亢進を促進し,微小血栓を生じる.また細小動脈の収縮・狭窄により赤血球の破壊,微小血管障害性溶血性貧血を生じる.確実な降圧療法により予防可能例も多いが,一時的に透析療法を要することもある.RA系亢進のため血漿アルドステロン濃度は上昇し,腎機能低下にもかかわらず血清Kは低値を示す.
治療
 入院のうえ,時間単位での積極的降圧療法が必須である.初期にはCa拮抗薬の持続静注によって拡張期血圧100 mmHgを目標にコントロールする.安定すれば,RA系抑制薬を少量から開始し,徐々に経口薬への切替をはかる.最終的には130/80 mmHgを目標とする.悪性腎硬化症の半数以上が本態性高血圧からの発症であるが,腎血管性高血圧症糸球体腎炎などに起因する二次性高血圧のことも少なくない.原疾患を鑑別し,その治療も重要である.[木村玄次郎]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報