ネフローゼ症候群(読み)ねふろーぜしょうこうぐん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネフローゼ症候群」の意味・わかりやすい解説

ネフローゼ症候群
ねふろーぜしょうこうぐん

腎臓(じんぞう)の糸球体濾過(ろか)膜の異常によって透過性が高まり、大量のタンパク(アルブミングロブリンなど)が尿中に喪失し、全身の浮腫(ふしゅ)(むくみ)、高度のタンパク尿、乏尿をきたす腎疾患をいう。真性リポイドネフローゼとネフローゼ型慢性腎炎、およびその他の原因による二次性ネフローゼに分けられる。

[加藤暎一]

真性ネフローゼ

原因は不明で、おもに小児にみられる。症状は、全身の倦怠(けんたい)感、顔面の浮腫、尿量の減少、タンパク尿、血液中のタンパク質量減少(とくにアルブミンの減少)、コレステロールの増加などがあげられる。血圧は正常で、腎機能も低下せず、尿の比重も高い場合が多い。予後は幼児や若年者では悪くないが、成人では長い経過を経て腎機能が侵されることが多い。治療としては、ナトリウムの制限、高タンパク食、利尿剤投与副腎皮質ホルモンの投与などが有効である。

[加藤暎一]

ネフローゼ型慢性腎炎

慢性腎炎のうち、浮腫および高度のタンパク尿をきたすもので、原因は腎炎と同じである。症状は浮腫、乏尿、タンパク尿があり、この疾患では血圧が高くなり腎機能も障害される場合がある。予後は真性ネフローゼより悪いことが多い。治療は慢性腎炎に準じ、食事療法が主で、薬剤による治療効果はあまり期待できない。

[加藤暎一]

その他の原因による二次性ネフローゼ

糖尿病、循環障害感染症腫瘍(しゅよう)、膠原(こうげん)病、妊娠、薬剤、中毒などによる二次性ネフローゼで、予後は原因疾患により異なり、治療も原因疾患に応じて行われる。原因疾患の判明しているものではその治療により、また薬剤などによるものではその投与を中止することにより、それぞれ症状の改善をみることが多い。

[加藤暎一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネフローゼ症候群」の意味・わかりやすい解説

ネフローゼ症候群
ネフローゼしょうこうぐん
nephrotic syndrome

蛋白尿 (1日尿蛋白量 3.5g以上を持続) ,低蛋白血症 (血清の総蛋白量 6.0 g/dl 以下) ,高脂血症 (血清総コレステロール 250 mg/dl 以上) および浮腫を主症状とする症候群。原因としては,膜性糸球体腎炎,全身性紅斑性狼瘡,糸球体腎炎,糖尿病,アミロイド症,多発性骨髄腫などがある。腎機能は通常侵されないが,再発を繰返す難治性の腎臓病である。治療には塩分制限,高蛋白食,副腎皮質ステロイド剤の投与を行う。利尿剤や血漿代用剤は,浮腫が強い場合に補助的に使用する。歴史的にみると,かつてドイツ学派は,腎臓病を腎炎,ネフローゼ,腎硬化症に三大別し,ネフローゼを炎症による病変ではなく,尿細管上皮の変性による疾患であると定義した。この場合のネフローゼは,腎機能は正常で,高血圧はなく,血尿もなく,予後良好なもので,真性またはリポイドネフローゼとも呼ばれた。しかし,その後このような条件に合致するネフローゼの存在が疑問視され,最近では,小児にまれに存在するだけで,本来のネフローゼとは腎炎の病期の一つを表わすにすぎない病態と理解されている。アメリカ・イギリス系の学者は,早くから本症を症候学的にとらえる立場をとっており,日本でも,ネフローゼ症候群として概念が統一されることになった。

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