改訂新版 世界大百科事典 「放物型方程式」の意味・わかりやすい解説
放物型方程式 (ほうぶつがたほうていしき)
parabolic equation
∂u/∂t=c⊿u+f(t,x) ……(1)
(t>0,⊿=∂2/∂x12+……+∂2/∂xn2)
と書かれる。ここでcは正の定数,fは既知関数である。物理的には熱伝導,または物質の拡散現象を記述する方程式で,未知関数u=u(t,x)は時刻t,空間の点x=(x1,……,xn)における温度,または拡散物質の濃度を表す。通常,方程式(1)の解で初期条件,
u(0,x)=u0(x) ……(2)
を満たすものを求めることが問題になる。ここでu0(x)は有界連続な関数で,初めの温度分布,または濃度分布を表す。この問題を放物型偏微分方程式の初期値問題という。この初期値問題の解u(t,x)は,基本解と呼ばれる関数,
を用いて,
により与えられる。ここでdyはn次元空間Rnにおける体積要素dy1……dynを表し,Rnの点x=(x1,……,xn),y=(y1,……,yn)に対して,x-yは点(x1-y1,……,xn-yn)を表す。
執筆者:伊藤 清三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報