朝日日本歴史人物事典 「比企尼」の解説
比企尼
平安後期・鎌倉時代の女性。源頼朝の乳母のひとり。乳母として武蔵国比企郡(埼玉県)を拝領,それに伴い,夫掃部允は比企に下向した。夫の死後も頼朝に奉公,おいの比企能員を猶子とし,頼朝に推挙して奉公させている。娘は河越太郎重頼の妻となっていたが,頼朝の子頼家が生まれるとその乳母となった。母娘2代にわたって源家の乳母を務めたことになる。頼朝・政子はそろって比企尼の家をしばしば訪れ,尼の宅で宿老と共に酒宴を催したりもしている。猶子能員は頼家の乳母夫を務め,またその娘若狭局が頼家の愛妾でもあったことから,頼家の外戚として北条氏一族と対立を深め,建仁3(1203)年,北条氏の征討を受けることになった(比企能員の乱)。
(田端泰子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報