江湖派(読み)こうこは

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江湖派」の意味・わかりやすい解説

江湖派
こうこは

中国、宋(そう)代の詩派。江湖は官界に対する民間の意。書店の主人陳起(ちんき)がおもに民間詩人の作品を編集して『江湖小集』95巻、『江湖後集』24巻などを出版したことから、のちにこれらの詩集に収められた100余人を江湖派の名でよぶようになった。江湖派の代表詩人は、姜夔(きょうき)、戴復古(たいふくこ)、劉過(りゅうか)、高翥(こうしゃ)、劉克荘(りゅうこくそう)の5人とされるが、このなかでは劉克荘だけが高級官僚であって、他はおおむね仕官しなかった在野の人ばかりである。戴復古のような職業的文人の指導を受けて詩をつくっていた市民詩人の集合が江湖派であるといえよう。しだいに宋王朝が末期に近づくなかにあって、小詩人に似ず気骨のある作者が多いのがこの派の特徴である。

[横山伊勢雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の江湖派の言及

【宋詩】より

…陸游はもっとも戦闘的であり,愛国詩人として知られる一方,江南農村の生活と自己の内面とを題材として,おびただしい詩を残した。南宋後期は江湖派と称する無数の小詩人の時代で,詩は市民レベルで広く普及した。その中で,《三体詩》の編集に見られるように,唐詩ことに晩唐風の淡泊な詩が復活する傾向が見られる。…

【中国文学】より

…北方からの侵略者に対する徹底的抗戦の主張を終生もちつづけ,その熱情を詩に表現したが,官をやめて長く住んだ農村の景物の描写にもすぐれていたことを見のがすべきではない。陸游は〈江西派〉の圏外にいたと思われるが,彼の死後にできた詩人の集合である〈江湖派〉の中心となる青年詩人には彼の影響が強かったと言われる。この派には市民も加わっていて,詩を作る人の範囲が唐代中葉に比べていっそう広くなったことを示す。…

※「江湖派」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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