姜夔(読み)きょうき(英語表記)Jiang Kuei

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「姜夔」の意味・わかりやすい解説

姜夔
きょうき
Jiang Kuei

[生]紹興25(1155)?
[没]嘉定14(1221)?
中国,南宋の詞人。 鄱陽 (はよう。江西省) の人。字,堯章。父がくの任地漢陽で育ったが紹煕1 (1190) 年紹興の白石洞付近に居を定め,白石道人と号した。生涯官職につかず江南を往来して山水を楽しみ,晩年は窮乏のうちに終った。詩も唐の陸亀蒙を学んで陸游范成大の後継者と評価されたが,特にでは「清空」と評される高い格調で,艶情,風物を詠じて古今独歩といわれ,柳永周邦彦辛棄疾と並んで四大家と称される。また,みずからつくった曲が多く,詞のかたわらに楽譜を注記した作品が詞集に残されており,当時の曲調を復元する貴重な資料となっている。『白石道人詩集』『白石道人詩説』『白石道人詞集』などのほか,書に『続書譜』『絳帖平』,音楽に『大楽議』『琴瑟 (きんしつ) 考古図』がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「姜夔」の意味・わかりやすい解説

姜夔
きょうき
(1155?―1221?)

中国、南宋(なんそう)の文人、詞人。字(あざな)は堯章(ぎょうしょう)。号は白石道人。鄱陽(はよう)(江西省)の人。詩文、書画、音楽など広く文学・芸術に通じ、官位をもたないまま、范成大(はんせいだい)、楊万里(ようばんり)など、有名な官僚文人たちと親交があった。南宋特有の文人の典型といえる。詩人としても一流で、『白石道人詩集』2巻があるが、歌辞文芸である「詞」においてさらに有名で、洗練された表現、「清空」と評される典雅な風格は、南宋文人詞の一頂峰を形成する。詞集『白石道人歌曲』4巻には一部に楽譜を存し、宋代音楽研究の重要資料となっている。ほかに書の評論『絳帖平(こうちょうへい)』『続書譜』および詩論『詩説』などの著述がある。

村上哲見

『中田勇次郎著『漢詩大系24 歴代名詞選』(1965・集英社)』『村上哲見著『中国詩文選21 宋詞』(1973・筑摩書房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「姜夔」の意味・わかりやすい解説

姜夔 (きょうき)
Jiāng Kuí
生没年:1155?-1221?

中国,南宋の文人。字は尭章,号は白石道人。江西省鄱陽(はよう)の人。詩文書画音楽などひろく文学芸術に通じ,無官のまま范成大,楊万里などの高級官僚と親交を結んだ。ことに歌辞文芸,作者として知られ,清空と評される独自の風格は南宋詞の一頂点といえる。《白石道人詩集》《白石道人歌曲》(詞集,一部に楽譜を存することでも有名)のほか,書論の著《続書譜》《絳帖平》などがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の姜夔の言及

【楽譜】より

…記号はのちに〈工尺譜〉として知られる〈合,四,一,上,勾,尺,工,凡,六,五〉の文字を用いるものと,さらにそれを簡略化した〈,一,〉などの記号を用いるものとがある。これらの俗字譜は,南宋に至って,朱熹(しゆき)(朱子)も言及しており,簡略化した文字譜の代表的な用例としては,張炎の《詞源》(1248),姜夔(きようき)の《白石道人歌曲》(1202),陳元靚(ちんげんせい)編《事林広記》(1269)などがあるが,記号は人によって多少の相違がある。しかしこの宋代の俗字譜は一般化せず,その後はあまり利用されなくなった。…

【詞】より

…音楽に通じ,したがって韻律も精密で,後世〈詞家の正宗〉と尊重される。南宋になると,対金戦争に活躍した辛棄疾(しんきしつ)(《稼軒詞》)のような〈豪放派〉と呼ばれる詞人もいるが,姜夔(きようき)(《白石道人歌曲》),呉文英(《夢窓甲乙丙丁稿》),さらに宋末では周密(《草窓詞》),張炎(《山中白雲詞》)などが周邦彦のあとを受け,精巧で典雅な詞をひろめた。これらの詞人は北宋の文人官僚とは異なり,もっぱら詩文書画などの文事だけで世に重んじられる特殊な階層で,詞はこうした文人たちによってひたすらに洗練される。…

※「姜夔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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