知恵蔵 「無形資産」の解説
無形資産
有価証券、土地、建物、生産機械などといった有形資産とは異なり、無形資産は単独の価値としての客観的評価が難しい場合がある。このため、自己創設した企業のブランド価値などについては、決算書などの財務諸表では直接計上されていないものが多い。しかしながら、無形資産を有することで、ロイヤルティーが得られる、将来的な収益増が見込める、あるいはその無形資産をつくり出すために要する開発・研究コストなどが削減できるといった、実態的に有意な価値を持っている。
無形資産はその所有権が代価をもって売買されたり、企業統合に際しては該当企業の持つ価値として計上されたり、株価に反映されるなどして具体的な価値として数値的に評価される。この影響で、企業買収にあたり当該企業の買収価格が、その純資産の時価評価を大きく上回ることもある。この時生じた買収価格と時価評価純資産の差額を、「のれん代」として日本の商法や会社法などでは計上し、一定の期間を設けて償却することとしている。
ただし、償却期間等については恣意的な会計操作が可能であるため、いくつかの問題点が指摘されている。また、国際財務報告基準(IFRS)では、無形資産の償却が禁止されていたり、計上の仕方が異なったりという日本の企業会計原則との齟齬(そご)がある。金融庁が目指す日本企業のIFRS適用を進めていく上で、この扱いをどうするのかが解決を要する課題の一つである。また、国際企業がタックスヘイブンにある子会社に無形資産を移転し、この代価などとして子会社に送金するといった手口で巨額の税逃れをしていることが、各国の税収を圧迫する要因であるとして問題となっている。これらの防止のため、2013年6月の主要8カ国首脳会議(G8サミット)では、無形資産の定義や評価方法についての国際ルール作りに取り組むことになった。
(金谷俊秀 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報