翻訳|asset
一般に,特定の実体によって所有されていて,その実体にとって有用性を有する物財および権利で貨幣価値のあるものをいう。現金は典型的な資産である。したがってまた現金への請求権(債権)も資産であり,さらに,現金と交換される物財,すなわち購入される物財も資産である。物財のみならず,地上権,借地権,特許権,商標権等の財産上の権利もまた資産である。会計的には,資産は特定の企業が有する現金,および現金支出の結果であって,将来において収益をもたらす潜在的能力をもつ物財および権利であり,企業総資本の具体的運用形態を表すものである。会計上,支出原価と費用計算の関係から,貨幣価値を有しないある種の支出項目を資産として認識することがある。たとえば,将来の収益獲得活動のために有効とみなされる繰延費用(繰延資産と呼ばれる)がこれで,このような支出は将来の用役または便益という形態で回収できるものとみなされている。資産を記録する金額は,通常,時価ではなく支出額,すなわち原価および次期以降に公正に配分される部分的な原価である。他方,広告活動,経営者の先見性,取引先との関係,技術陣の能力などは,企業利益のたいせつな源泉を構成するものであり,しばしば広い意味で資産と呼ばれることもあるが,慣習上,これらに対する支出は費用として記録され,資産としては認識されない。ただし,上記のような企業利益の源泉を構成する諸要因を,包括的に全体として他企業から買収したような場合には,これをのれんとして資産に計上する。
会計上,資産は企業資本の循環過程における形態から,貨幣性資産と費用性資産とに大別できる。貨幣性資産とは,現金,預貯金,受取手形,売掛金等のように,新たな投下を待機している貨幣およびすでに投下過程を経て回収過程にある貨幣形態を表す資産形態である。回収過程にある資産は,その性格上,将来の収入額を基準として評価する。他方,費用性資産とは,商品,機械,建物,特許権,前払費用,繰延資産等のように,企業資本が現に投下され収益獲得のために機能している形態,したがってやがて費用化されるべき運命にある財貨ならびに権利を表す資産形態である。このような投下過程にある資産は,その性格上,投下額すなわち現金支出額(原価)を基準として評価する。資産を貸借対照表上に示すときには,その流動性の大小から,流動資産と固定資産に区別して表示する。流動資産には,現金,および商品や製品,原材料,仕掛品のような棚卸資産のほか,得意先との通常の商取引によって生じた債権(受取手形,売掛金等),さらに,これらの資産以外のもののうち,1年以内に回収されるものが含まれる。これらは短期的支払資金およびおもに売却を目的とする棚卸資産から成る。固定資産には,建物,土地等の有形固定資産と,営業権,特許権,借地権等の無形固定資産,および,関係会社株式,長期貸付金,長期前払費用等の投資その他の資産が含まれる。これらは,企業において1年以上にわたって使用されたり,回収が1年以上の長期にわたるものである。なお,繰延資産(繰延資産・繰延負債)は,上記の流動資産,固定資産とは区別して独立に表示される。
執筆者:嶋 和重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
会計上の資産は、貸借対照表上、借方に計上され、企業により支配されている資源のこと。その本質は当該資源から生じると期待される将来の経済的便益である。
具体的には、現金や預金、売掛金や受取手形、貸付金などの金銭債権等のような貨幣性資産と、商品・製品等の棚卸資産、建物や機械などの有形固定資産、特許権や意匠権などの無形固定資産のような一定の方法で損益計算上費用化される費用性資産に分けられる。そのほか、土地や建設仮勘定、子会社・関連会社株式やその他有価証券などの投資勘定のような、貨幣性資産でも費用性資産でもないものもある。
そのほか、将来の獲得収益と対応させ、適正な期間損益計算を行うため、換金価値がない費用を次期以降に繰り延べるために資産として計上する場合がある。これを繰延資産とよぶ。しかし、すでに費消した費用の繰延べにすぎないため、資産負債アプローチ(資産と負債の定義や測定を重視して利益を計上する会計計算の枠組み)の視点からはその資産性に対して疑義があるとされる。外国文献では繰延費用と称されている。
資産概念の本質に関しては、たとえば、日本の企業会計基準委員会による「討議資料 財務会計の概念フレームワーク」(2006年12月公表)によれば、「資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。」(第3章「財務諸表の構成要素」第4項〔資産〕)と定義され、「支配」は、所有権の有無にかかわらず、報告主体が経済的資源を利用し、そこから生み出される便益を享受できる状態をいうとし、また「経済的資源」とは、市場での処分可能性の有無にかかわらず、キャッシュの獲得に貢献する便益の源泉をいい、実物財に限らず、金融資産およびそれらとの同等物を含むとしている。
国際財務報告基準(IFRS)でも、同様に、「財務諸表の作成および表示に関するフレームワーク」において、「過去の事象の結果として特定の企業により支配され、かつ、将来の経済的便益が当該企業に流入することが期待される資源をいう。」(第49項(A))と定義され、経済的便益については、企業に現金・現金同等物を流入させることに貢献する潜在能力としている(第53項)。
資産の期末評価に関しては、その測定基礎として、一般に、歴史的原価、現在原価、実現可能価額、現在価値があげられる。歴史的原価とは、資産を取得する際に支出した価額(またはその相当額)、いわゆる取得原価を基礎とするものであり、現在原価とは、期末時点で評価対象の資産と同一または同等の資産を取得したと仮定した場合に支払う価額を基礎とするものである。また、実現可能価額とは、資産を通常の売却や処分を行うことで流入する価額を基礎とするものであり、現在価値とは、事業に投下されている過程で将来にわたる正味の現金流入額を合計し、貨幣の時間価値を考慮して現在価値に割り引いて計算したものを基礎とする。
[近田典行]
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…財産は,経済学上は簿記用語として用いられるし,法律上は,憲法に財産権の保障の規定(憲法29条)がみられるし,刑法では財産刑の対象となるが,最も多く用いられる法領域は民法,商法および各種の税法である。 簿記用語としては,財産とは一定会計単位組織の有する権利・義務のすべてを含むものとされ,それらは,積極財産(資産)と消極財産(負債)とに分類される。そして,積極財産はさらに有形資産と無形資産とに分けられ,前者は例えば現金,預金,商品,建物などであり,後者は売掛金,貸付金,特許権,営業権のようなものであるといわれている。…
※「資産」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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