…寺院にアジールを意味する遁科屋(たんかや)と称する建物のあったこと,また高山寺の明恵上人が北条泰時に〈敗軍の兵士来りなば袖の下,袈裟の裏なりとも隠してとらす〉と自らの命を賭した話は,寺院のアジールを顕著に現している。これは寺への駆込みによって,世俗の権力や権利義務関係からも絶縁するという〈無縁〉の原理にささえられ,しかも不入の権とあいまって,室町時代末期から戦国時代にかけて諸国に普及し,分国大名の菩提寺などが〈無縁所〉としてアジールの特権を与えられた。しかし各分国内の政治的統一が強化されるとともに,この特権も,楽市・楽座などの特権と同様に,しだいに制限され否定されるに至った。…
…それとともに,公界者,公界衆は私的隷属民(下人,所従)とは異なる遍歴の職人,芸能民をさし,遍歴の算置(さんおき)が公界者に手をかけることを昂然と拒否したような(狂言《居杭(いぐい)》),積極的な意味を持つようになる。私的な氏寺とは異質な公界寺の公界僧は〈能〉を持つことが期待されたが,こうした寺は無縁所ともいわれ,若狭の正昭院のように,諸役免許,大名の代官不入を保証され,しばしば科人(とがにん)の駆入りを認められたアジールとしての機能を備えていた。相模の公界所江嶋の人々は他人を主とすることを禁じられ,そこは世俗の争いの及ばない平和な場だったのである。…
… もとより下人の境遇は,《山椒大夫》の安寿・厨子王の運命に象徴されるように過酷なものがあったが,一方には捨子や身寄りのないものを養い保護する慣習もあり,下人の実態は,永続的ではないとしても家族をもち,主から給与された田畠を耕作するなど,平民とさほど異ならないところもあったのである。また下人はしばしば,前述した仏神領などや,戦国期に〈無縁所〉〈公界寺〉などといわれた寺院をはじめ,市・町などのアジールに逃亡し,主を変えることもあった。主は曳文に,いかなる場においてもその身を捕らえうるという担保文言(もんごん)を書かせ,南北朝期になると,領主たちは相互に契約を結び,逃亡した下人の相互返還(人返し)を行うなど,下人の掌握につとめている。…
※「無縁所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...
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