…その他《花桜折る少将》の終末のどんでん返しの趣向や,《このついで》の薫物(たきもの)のついでに3人が次々に語る短い話に示される恋のあわれさの鮮烈な印象なども,短編物語の特徴をよく生かしている。 10編のうち《逢坂越えぬ権中納言》だけは1055年(天喜3)5月3日に禖子内親王家(六条斎院)で催された物語合せに提出された18の新作物語の中の一編で,小式部という女房の作であることが明らかにされているが,他の9編と断章の作者,成立年次は不明である。ただ《花桜折る少将》《ほどほどの懸想》《貝合せ》《はいずみ》は《逢坂越えぬ権中納言》とともに,1271年(文永8)に成った《風葉和歌集》(物語の歌を勅撰集風に撰修した集)に各1首を見せているから,成立年次の下限はわかる。…
※「物語合せ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」