精選版 日本国語大辞典 「理無」の意味・読み・例文・類語
わり‐な・い【理無】
〘形口〙 わりな・し 〘形ク〙 (「割り無い」で、ことわり(理)が無いの意)
※浄瑠璃・近江源氏先陣館(1769)六「三浦之介にわりなき恋路」
② 無理である。強引である。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「折しもこそあれ、わりなき召しかな」
③ どうしようもなくつらい。たえがたく苦しい。こらえきれないほどである。どうにもやるせない。
※落窪(10C後)一「夜一夜、しらぬことによりうちひき給ひつるこそいとわりなかりつれ」
※源氏(1001‐14頃)空蝉「をととひより腹をやみて、いとわりなければ、しもに侍りつるを」
④ やりようがない。どうしようもない。仕方がない。やむを得ない。余儀ない。是非もない。
※落窪(10C後)一「帯刀(たちはき)わりなしと思へり」
※枕(10C終)一九六「いみじう酔ひて、わりなく夜ふけてとまりたり」
⑤ どうしていいかわからない。途方にくれる。困ったことである。
※後撰(951‐953頃)恋二・六二九・詞書「男侍る女を、いとせちにいはせ侍りけるを、女いとわりなしといはせければ」
※堤中納言(11C中‐13C頃)逢坂越えぬ権中納言「宮は、さすがにわりなく見え給ふものから、心つよくて、明けゆくけしきを」
⑥ やっとのことである。かろうじてである。
※今昔(1120頃か)二九「破无くして此(か)く隠れて命を存する」
⑦ 程度が分別を超えている。どうしようもないほどである。はなはだしい。ひととおりでない。
※伊勢物語(10C前)六五「猶わりなく恋しうのみおぼえければ」
※栄花(1028‐92頃)かがやく藤壺「かくて七月相撲の節にも成ぬれば、わりなき暑さをばさる物にて」
⑧ 言いようがないほど美しい。非常に感動的である。
⑨ 格別すぐれている。殊勝である。
⑩ 一通りでなく親しい。分別を超えて親密である。切っても切れない。
※御伽草子・福富長者物語(室町末)「鬼うば憎けれど、さすがわりなき中なれば、皺(しわ)多き手を煖めておなかをさすれば」
⑪ いじらしい。とてもかわいい。〔名語記(1275)〕
※曾我物語(南北朝頃)一〇「をさなき時よりとりそだてて、わりなき事なれば」
わりな‐げ
〘形動〙
わりな‐さ
〘名〙
わり‐な【理無】
※宇津保(970‐999頃)祭の使「あなわりなや、折しもこそあれ、わりなき召しかな」
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