日本歴史地名大系 「異本阿波志」の解説
異本阿波志
いほんあわし
五冊 編者不詳
成立 寛政年間か
原本 不詳
写本 徳島県立図書館所蔵呉郷文庫ほか
解説 書名は藩撰の地誌「阿波志」と区別するために「異本阿波志」とよばれるが、呉郷文庫本の内題は「阿波志共五」が用いられている。内容は阿波に関する地誌・軍記・和歌を集成したもので、呉郷文庫本では阿波記・阿波国名所旧跡・古戦場附故人歌・阿国記・国記・神社寺院伝記・延喜式神名帳阿波神社・阿淡雑記・渭府雑記・四国軍記・阿波雑記・蜂須賀家政公阿波御入国並御家御繁昌之事・郡村からなる。とくに郡村は地誌的記述が豊富であるほか、渭府雑記は城下各町の成立などに注目される記述が目立つ。成立は宇野直重の記した「阿波記」が宝暦七年、秀安の「阿国記」は宝暦一三年などとみえるほか、寛政年間の記述もあるといわれており、寛政年間あるいは宝暦―明和年間ともされる。写本は一宮神社宮司笠原氏所蔵の笠原本、名東郡早淵村後藤尚豊筆写の後藤本をもととする田所本・島田本・呉郷文庫本のほか、現在所在不明の中川本がある。諸写本の多さは本書の価値を示している。
活字本 笠原本異本阿波志(謄写版)
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報