六訂版 家庭医学大全科 「腹膜腫瘍」の解説
腹膜腫瘍
ふくまくしゅよう
Peritoneal tumor
(食道・胃・腸の病気)
どんな病気か
腹膜腫瘍には、
一方、続発性には、がん性腹膜炎という腹膜疾患のなかで最も頻度が高く、胃がん・大腸がん・膵臓(すいぞう)がんなどが進行し、
原因は何か
腹膜中皮腫は、
がん性腹膜炎は、胃がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がん、卵巣がんなどの原発巣からがん細胞が血流やリンパ管を介して、あるいは直接的に腹膜に散布され播種性に広がる、いわゆるがんの末期状態となることが原因です。
腹膜偽粘液腫は、がん性腹膜炎の
一方、後腹膜腫瘍は、後腹膜腔にあるあらゆる組織、すなわち結合組織、脂肪組織、血管、リンパ管、筋肉組織、神経組織などから腫瘍が発生します。さらにそれぞれに良性・悪性があり、表8にまとめを示します。
症状の現れ方
腹膜中皮腫では、腹痛、腹部
がん性腹膜炎では、自覚症状として吐き気、食欲不振、便秘、腹部膨満感が現れます。さらには、腹部の
腹膜偽粘液腫は、一般に長期の経過をたどるものが多く、初期では無症状の場合が多くみられます。病期の進行とともに、便秘、悪心、食欲不振などの症状を示します。
後腹膜腫瘍に特有な症状はなく、腫瘤を腹部に認めて受診する場合が多くみられます。時に吐き気、嘔吐、腹部膨満感などの症状を訴えることがあります。後腹膜にある臓器を圧迫するために十二指腸狭窄、尿管狭窄などの症状を示すことがあります。
検査と診断
腹膜中皮腫では、まず石綿(アスベスト)などの曝露歴の有無を十分に問診します。
腹膜中皮腫、がん性腹膜炎、腹膜偽粘液腫、後腹膜腫瘍では、ともに腹部超音波検査や腹部CT検査が腫瘍の広がりを診断するのに最も有用です。確定診断には腹水の細胞診が有用とされていますが、その判定は容易ではなく、鑑別診断が困難な場合もあります。
治療の方法
腹膜中皮腫、腹膜偽粘液腫の治療は、可能なかぎり外科的に腫瘍を切除することです。時に抗がん薬による化学療法および放射線療法を併用することもあります。
がん性腹膜炎では、対症療法が行われるだけで積極的な治療は行いません。抗がん薬を腹腔内に投与することもありますが、効果はあまり期待できません。
後腹膜腫瘍は、手術による腫瘍の摘出が第一選択です。良性の場合には、腫瘍がかなり大きくても積極的に切除が行われます。一方、悪性腫瘍の場合には切除しても再発する可能性が高く、切除不能例では抗がん薬による化学療法や放射線療法が行われます。
病気に気づいたらどうする
先に述べた症状で腹部膨満感を中心に吐き気、嘔吐、食欲不振、腹痛、腹部の腫瘤、さらに、るいそう、全身倦怠感などの悪液質(全身が極めて衰弱した状態)を示す症状がみられる場合には、早めに内科を受診してください。
棟方 昭博
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報