続発性腹膜腫瘍

内科学 第10版 「続発性腹膜腫瘍」の解説

続発性腹膜腫瘍(腹膜腫瘍)

(2)続発性腹膜腫瘍
概念
 他臓器からの播種または血行性,リンパ行性によって転移性の腫瘤を腹膜に形成した状態であり腹水,腹膜炎症状を呈するものを癌性腹膜炎という【⇨8-10-1)-(3)】.腹膜偽粘液腫は特徴的な臨床症状を呈するため,以下では腹膜偽粘液腫について概説する.
 腹膜偽粘液腫(pseudomyxoma peritonei)は粘液またはゼラチン様物質が腹腔,骨盤腔内に貯留し,腹膜にムチンを産生する結節をもつ.当初は良性の囊胞性腺腫の破綻によるムチン産生細胞の腹膜播種に限定されていたが,最近は腸管,膵,卵巣,肺原発のムチン産生性腺癌の腹膜播種も含めて扱う.そのため一概に腹膜偽粘液腫といっても,原発腫瘍の性質により経過,予後が異なる.頻度では虫垂腺癌,卵巣囊胞腺癌によるものが多い.
臨床症状
 腹膜中皮腫と同様に早期には無症状だが腹腔内にゼラチン様粘液物質が大量に貯留してくると腹部膨満感が出現,腹痛,発熱,食欲不振,体重減少などをきたす.経過中,男性では鼠径ヘルニア,女性では卵巣囊腫を合併することが多い.
診断
 腹水の細胞診にてムチン内に腺腫,腺癌細胞が検出されれば確定診断とされる.ただしきわめて粘稠であるため吸引が困難な場合があり太めの針で吸引する.CTなどの画像では腹腔内に低吸収値を示す不均一な貯留物を認め,肝臓,脾臓など実質臓器の表面にscalloping(弧状圧痕)を認めるのが特徴的である(図8-10-2).採血で特徴的な所見は認めないが,CEA,CA19-9,CA125などの腫瘍マーカーが上昇することもある.
治療
 第一選択は外科的切除である.原発巣の摘出と並行し腹腔内のムチンを取り除くのが目的だが,根治は困難なことが多い.根治できない場合は再度の粘液の貯留を認め,外科的処置を繰り返すこととなる.根治をめざし腹膜転移巣もすべて取り除く拡大手術が試みられるがいまだ効果は確立していない.抗癌薬の腹腔内投与も試みられるが効果は限定的である.その効果を増強すべく抗癌薬投与時に腹腔内を温め薬剤の浸透率を上げる療法などが試みられている.
予後
 原疾患によって予後は異なり,良性の囊胞腺腫の破綻によるものは年齢調整後の5年生存率が84%と良好であるが,虫垂や卵巣の腺癌由来のものでは7%と不良である.[藤沢聡郎・松橋信行]
■文献
Debrock G, Vanhentenrijk V, et al: A phase II trial with rosiglitazone in liposarcoma patients. Br J Cancer, 89: 1409-1412, 2003.
Saab S, Hernandez JC, et al: Oral antibiotic prophylaxis reduces spontaneous bacterial peritonitis occurrence and improves short-term survival in cirrhosis: a meta-analysis. Am J Gastroenterol, 104: 993, 2009.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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