デジタル大辞泉
「転移」の意味・読み・例文・類語
てん‐い【転移】
[名](スル)
1 場所が他にうつること。また、場所をうつすこと。移転。「施設が転移する」
2 病原体や腫瘍細胞が、原発巣から血流やリンパ流などを介して他の場所に移り、そこに同様な組織変化を起こさせること。癌などにみられる。
3 物質が、ある状態から他の状態へ変化する現象。ふつう結晶相の変化や同素体変化などの相転移をいう。
4 前に学習したことが、あとの他の学習に影響を与えること。学習を促進する場合を正の転移、逆の場合を負の転移という。
5 精神分析で、患者が幼児期に親などに対して抱いていた感情を治療者に向けること。
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てん‐い【転移】
- 〘 名詞 〙
- ① 位置などが他に移ること。また、位置を移すこと。移動すること。
- [初出の実例]「夜は星の転移する事もあらうぞ」(出典:史記抄(1477)九)
- [その他の文献]〔史記‐匈奴伝〕
- ② 物事が移り変わること。変化すること。
- [初出の実例]「爾来世運の転移と共に」(出典:海潮音(1905)〈上田敏訳〉序)
- 「然るにその慾情は後に進化し転移して」(出典:近代の恋愛観(1922)〈厨川白村〉四)
- ③ 病原体や腫瘍細胞などが原発巣から他の場所へ移行して、そこに原発巣と同様の変化をおこすこと。血行性とリンパ行性の二種がある。転移性眼炎、癌転移などに見られる。
- [初出の実例]「かなり広範な転移があり」(出典:最後の旅(1969)〈加賀乙彦〉)
- ④ 物質がある状態から他の状熊へ移ること。ふつうは固体の状態変化に用いる場合が多い。分子・原子・原子核のエネルギー状態の変化にもいうことがある。
- ⑤ 心理学の用語。
- (イ) ある内容を学習した結果、直接に訓練しなくとも他の精神的・運動的機能が上達すること。
- (ロ) 盲人が視覚的なものを触覚的に、触覚的なものを視覚的に表わすことなど空間知覚の場合をいう。
- (ハ) 感情の転嫁のこと。
- [初出の実例]「これは、妹に対するうらみが、他の女の子に転移した例と考えることができる」(出典:精神分析入門(1959)〈安田一郎〉二)
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てんい
転移
transfer
転移とは,以前に学習したことが後の学習に影響を及ぼすことであり,多くの要因が関係する。学習効果が他の場面へ拡大することでは,般化generalizationの現象も転移の一つといえる。このような学習効果の拡大は,実験対象がいったい何を学習したか,つまりどのような刺激に,あるいはどのようにして所定の刺激によって制御されたか(刺激性制御stimulus control)に依存する。
【移調transposition】 動物が,刺激間の「関係性」を学習したことで後続の学習が制御される例に移調がある。ケーラーKöhler,W.(1939)は,ニワトリに明るい灰色のカードと暗い灰色のカードを同時に呈示して弁別を行なわせる同時弁別simultaneous discriminationの課題を与えた。明るいカードに近づいたら強化子を与え(S+と表わす),暗いカードに近づいたら強化しなかった(S-とする)。十分な訓練の後でニワトリはS+を選択するようになった。次の訓練においてケーラーは,前の訓練でS+として用いた明るい灰色カードと,それよりいっそう明るいカードの二つを同時呈示して,どちらを選択するかを見た。するとニワトリは,今まで見たことのなかった刺激であるいっそう明るいカードを選択した。まるで楽曲の形を変えずに原調から他の調に移るがごとく,ニワトリが刺激間の関係性を学習したことによる選択結果であると考えられることから(この考え方を関係説relational theoryという),移調とよばれた。
関係説に対して,実験対象は二つの刺激について別々に学習しただけで,2者間の「関係」について学習したのではないという考え方(絶対説absolute theoryといわれる)がある。スペンスSpence,K.(1937)は,同時弁別事態で見られる移調と,さまざまな刺激がいっときに一つしか呈示されない継時弁別successive discrimination事態で見いだされる頂点移動peak shiftを絶対説で説明した。原理的には,S+が興奮性の強度を,S-は制止性の強度を獲得するというものであり,それぞれの刺激の周辺において般化勾配が発達し,出現する反応は,興奮性の強度から制止性の強度を差し引いた残差(正味)の強度で決定されるとした。しかし一方では,絶対説では説明できないが関係説に有利な実験結果も存在する。したがって,実験対象が弁別学習をする際に,刺激呈示の方法や課題の性質に応じて学習を進行させ,刺激の絶対的な特性と刺激間の関係性の双方を用いることができるというのが妥当な結論である。
【過剰学習と逆転学習】 学習の転移は,ある事柄に関して学習が完成した後に引き続いて同じ学習を続けること,つまり過剰学習overlearningまたは過剰訓練overtrainingを与えた場合にも見られる。たとえば,白色刺激をS+とし,黒色刺激をS-とする弁別学習を行なわせ,一定の基準に到達し学習が完成した(基準訓練)後に,黒白に対する報酬関係を入れ換え,白色をS-に,黒色をS+とする学習を行なわせた場合(これを逆転学習reversal learning,または逆転訓練reversal trainingという),最初の学習完成後直ちに逆転を行なう場合よりも,追加の学習(過剰訓練)を与えた後に逆転を行なう方が,逆転学習の成績が良い場合がある。これを過剰訓練逆転効果overtraining reversal effect(ORE)という。OREは,過剰訓練を与えることにより刺激への選択的注意が形成され,逆転学習が促進されるという仮説(注意説)により説明されることが多い(Mackintosh,N.J.,1975)。
他方,動物を直線走路のような単純な事態で学習させる場合,走行反応が安定する値を示すまで(これを漸近値という)連続強化(毎試行に強化子を与える手続き)で訓練し(基準訓練群),そののち直ちに消去試行を与える場合よりも,過剰な訓練を続けた後に消去試行を与える(過剰訓練群)方が消去が速い(消去抵抗が低いと表現する)現象が見られる。これは過剰訓練消去効果overtraining extinction effect(OEE)といわれる。OEEは,消去事態における過剰訓練群のフラストレーションの蓄積が走行を妨害し消去を速めるという仮説(Amsel,A.,1967)や,訓練と消去の事態との弁別が容易であるか否かにより消去における遂行が決定されるという仮説(般化減少説)により説明されている(Capaldi,E.J.,1967)。
主に弁別学習事態において,基準訓練と逆転訓練を何度も繰り返す学習を連続逆転学習serial reversal learningという。この場合,訓練を反復するにつれて,続く訓練(基準・逆転の双方)における学習成績がしだいに改善される現象が見られ,これは漸次的改善progressive improvement(PI)といわれ,前述した選択的注意の概念により説明されている。
【学習セットlearning set】 学習の転移は,S+とS-の関係を逆転させ,それを単純に交替しつづける場面だけではなく,訓練で用いた刺激とテスト場面での刺激がまったく異なる場合においても生じる。ハーローHarlow,H.F.(1949)は,300以上の異なる視覚弁別課題を2頭のアカゲザルに課した。二つの異なる刺激対象がそれぞれS+とS-にされ,これを6回試行した(6回の試行が一つの弁別課題を構成する)。次に別の刺激がS+とS-にされ,やはり6回試行した。このようにして次々と新しい課題で実験を続けると,初めは偶然的水準の正答率であったが,しだいに改善され,250問目になると直ちに正答に達した。一連の弁別課題を通して見られた学習の改善は,サルが学習の仕方を学習したことにより,学習セットまたは学習の構えを形成したと考えた。これは,課題から課題への転移が生じたことになる。
学習セット獲得能力を,異なる動物種で行なわれた学習セット実験のデータに基づいて比較した研究(Warren,J.M.,1965)がある。それによれば,アカゲザルが最も速く学習し,リスザルやネコはそれより遅く,ラットとリスはきわめて遅いことが示されている。さまざまな弁別課題から抽象的な情報を学習し,それを利用する能力が系統発達的に見て高等な動物ほど優れていることを示唆する結果と見られている。しかし,各動物にはそれぞれ得意分野があり,課題の性質,必要な反応の種類,用いられる刺激の特徴などに依存して,決して一義的ではない多様な能力を有することが知られており,単純な序列化は適切ではない。
【潜在学習latent learning】 動物を用いて学習させる場合,通常は強化子(報酬)を与える。強化子なしの単なる装置内の探索行動によっては学習が生起しにくいといわれるからである(Hull,C.L.,1943)。しかし,そのような場合でも後の行動や学習に影響を与える(転移する)ことがある。トールマンTolman,E.C.ら(1939)は,ラットを3群に分け,一日1回の試行のもと14の分岐点をもつ迷路で17日間訓練した。第1群は探索だけの条件であり,終点(目標)では強化子は与えられなかった。第2群は毎試行目標において強化子が与えられた。第3群は初めの10回の試行までは強化子がなかったが,11日目からはそれが与えられた。ラットが袋小路に入り込んだ数を誤反応としたところ,第1群と第3群の成績は,第2群よりも劣っていた。注目すべきは第3群の11日目以降の成績である。12日目からは,最初から強化子が与えられていた第2群を上回る好成績を記録したのである。トールマンらは,第3群のラットは,強化子なしでも学習を進行させていたが,行動(遂行performance)として表わさなかっただけであり(したがって潜在学習という),それを表わすよう動機づけられる機会があれば(つまり強化子が与えられれば),一気に行動として表面化させたのだと考えた。学習の生起にとって強化子が必須条件ではないことを示した結果であり,その考え方は現代でも受け入れられている。この類の研究が契機となって,強化子が学習に対してどのような役割をもつかについての研究に進展し,学習理論の発展に寄与したといえる。 →般化 →弁別学習 →レスポンデント条件づけ
〔石田 雅人〕
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転移(腫瘍)
てんい
がん細胞が原発巣(始めに発生した部位)とは離れた組織や臓器で非連続性の腫瘍(しゅよう)を形成すること。腫瘍の重要な性質の一つである。
腫瘍が広がる場合、原発巣に連続して発育する広がり方と、原発巣から離れた遠い場所に種々の方法によって運ばれ、その部位で新たに発育する広がり方があり、後者が「転移」である。転移による広がり方は、その経路によって次のように分類されている。すなわち、リンパ流を介するリンパ性転移(リンパ行性転移)、血行を介する血行性転移、肺がんが気管支などの管を介して広がるような管内性転移、上唇(じょうしん)のがんがこれに触れている下唇に広がるような接触性転移、腹腔(ふくくう)内などにばらまかれて広がるような播種(はしゅ)(播種性)転移である。
腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍とに大別され、悪性腫瘍は一般に転移をおこすが、良性腫瘍は転移しないという特徴を有するため、転移は良性腫瘍、悪性腫瘍両者の重要な鑑別点である。がん(がん腫)はリンパ性転移の傾向が強く、肉腫は血行性転移をおこしやすいが、がんのなかでも、組織学的に血管と密接な関係を有する特徴をもつ肝細胞がん、腎(じん)細胞がん、絨毛(じゅうもう)がんなどでは血行性転移を好むものもある。接触性転移のなかには、腫瘍を外科的に切除した場合に、メスなどが違う場所の組織を傷つけ、そこに腫瘍細胞が接着して転移するものも含まれるが、これは別に移植性転移ともよばれる。播種の実例としては、胸腔にばらまかれたがん性胸膜炎や腹腔でみられるがん性腹膜炎、あるいは腹腔に播種されたがん細胞が卵巣に転移してクルッケンベルグKrukenberg腫瘍となるなどがよく知られている。
転移という現象は、悪性腫瘍の診断・治療にあたって重要な課題を提供するものである。一つには、原発巣を取り除いても転移(転移巣)が存在すれば腫瘍の広がりを止めることはできないということであり、もう一つは、たとえば肺に腫瘍を発見した場合、それが原発巣である可能性も、転移巣である可能性もあるため、診断上注意を要するということである。転移が形成される過程には、腫瘍細胞が原発巣でばらばらになり、浸潤性に増殖して、血管などに侵入し、他の部位や臓器に移動運搬され、そこで塞栓(そくせん)をおこして定着し、その部位で増殖発育するなどの具体的なステップが考えられている。しかし、実際には転移の分布は統一的ではないし、また、脾臓(ひぞう)、筋肉などのような比較的転移をおこしにくい組織、臓器も知られている。このため、転移に関しては、血管などの経路の条件以外に、種子と畑の関係(seeds and soils説)、すなわち親和性あるいは腫瘍と臓器の相互関係などが影響していると考えられている。
転移は原発巣の腫瘍細胞が運ばれてきて増殖したものであるため、原発巣と転移巣とは原則的には同一の組織学的所見を示す。このことから、診療の際には、転移巣を生検(組織学的検査)で調べ、原発巣の部位、性質を逆に類推する方法が一般的に行われている。
なお、転移という語は、感染症において、病原体が血液に入り、菌血症、敗血症となって全身に広がるときにも使われることがある。
[渡邊清高 2017年11月17日]
転移(精神分析)
てんい
transference
感情転移ともいわれる。自由連想による精神分析では、患者は分析が進んでくると不安や希望などを自由に話すようになり、分析者に対して特殊な感情的態度をもつようになる。信頼の度を超えて患者は分析者に愛情を抱くようになったり、その反対に敵対的で攻撃的になったりする。これをそれぞれ正の転移、負の転移という。こうした転移は、患者が幼児期に親に対して抱いていた感情が移しかえられて、分析者に対して表出されるようになったものとみなされる。この転移は転移神経症とよばれ、精神分析治療に対する一種の抵抗とみなされる。自由連想によって無意識が意識に近づいてくると、患者は無意識を意識しないようにする抵抗の手段として転移をおこすと考えられるからである。しかし、逆説的であるが、このような転移抵抗がおこるからこそ分析的治療が可能になってくるのである。転移がおこると患者の幼児期に生じた親との葛藤(かっとう)が面接の現場のなかで再現されるので、心理的な病のもとになっている葛藤を現実的な問題として処理することができるからである。この意味では、転移がおこるか否かによって、治療が可能かどうかが決められる。一般に神経症の患者では転移がおきても、精神病の場合には転移がおきないので精神分析は困難であるといわれるが、クラインや彼女の後継者は精神病の場合にも転移精神病がおこると考え、積極的に精神分析治療を行った。
学習心理学の分野では、ある事柄を学習すると、他の事柄を学習しやすくなることがあるが、これを学習の転移という。この場合は、ある特殊な問題を解決するような能力を身につけるというより、もっと一般的な能力を身につけるかどうかが問題になる。
[外林大作・川幡政道]
『ハインリッヒ・ラッカー著、坂口信貴訳『転移と逆転移』(1982・岩崎学術出版社)』▽『松木邦裕著『分析空間での出会い――逆転移から転移へ』(1998・人文書院)』
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転移 (てんい)
transference
S.フロイトが見いだした心的現象のひとつ。〈感情転移〉とも訳される。精神分析療法の過程において,患者の幼児期における重要な人物(たとえば両親)に寄せた感情,欲望,観念などが分析者に向けて展開されること。このような人間関係の一様態は,あらゆる人間関係の中で本来多かれ少なかれみられるものであり,たとえば特定の人物が知らず知らずのうちにあたかも親のように見立てられたりすることはよくある。ただ精神分析療法においては,患者は感情を自由に表出することが許容され,しかも治療者は中立的態度を堅持するために転移が濃密で純粋な形で起こってくる。転移は,感情の質にしたがって〈陽性転移〉〈陰性転移〉および〈両極性転移〉(陽性転移と陰性転移とが入りまじったもの)に分けられ,また対象の性質により〈父親転移〉〈母親転移〉などに,発達水準を目印にして〈エディプス水準の転移〉〈前エディプス水準の転移〉などに分けられる。転移状況に入ると被分析者は,しばしば病苦を忘れたかのように分析者を巡る連想に終始するようになる。こうして転移状況において一時的に症状が消失する現象が見られ,これは〈転移性治癒〉と呼ばれる。転移状況においては,いわば幼児期の対人態度がいまここで再演されるわけであり,分析者はこの転移現象を理解し,これに適切な解釈を与えることによって,患者の歪んだ対人態度を体験的に修正することが可能となり,神経症に根本的な改善をもたらすことができる。ただし,精神病者に自由連想法を行うことは,無意識の氾濫をきたしむしろ自我の解体を促進するので,一般には禁忌とされている。
精神分析療法において転移現象は被分析者にのみみられるものではない。分析者も被分析者に対して,とくに被分析者の転移に対して多かれ少なかれ無意識的な感情反応を起こす。これは〈逆転移counter-transference〉と呼ばれる。より広義には分析者の被分析者に対する感情的態度のすべてを逆転移と称することもある。分析者は自己の逆転移を自覚しこれを統制できなければならないが,同時にみずからの逆転移をみつめることによって患者の無意識を知るよすがとすることができる。
執筆者:下坂 幸三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
普及版 字通
「転移」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
転移
てんい
transference
心理学用語。感情転移のことで,S.フロイトが精神分析で用いた鍵概念の一つ。対人関係において,現実の対象には不釣合いな感情や態度を示した場合,幼児期に接しただれか,特に両親に向けられていた感情や態度が再現されたと解釈できることが多い。これを転移と呼ぶ。転移には,信頼,友情,恋愛などの感情を伴う陽性転移と,恨み,敵意,憎悪などの感情を伴う陰性転移とがある。しかし,本来,陽性と陰性の両転移がともにみられるものであり (これを両価傾向=アンビバレンスという) ,状況の変化によって変容しやすく,輻輳した心理機制である。
転移
てんい
transition
物理学用語。遷移ともいう。ある状態から他の状態へ移る現象。特に,物質の集合状態の変化を転移と呼び,相転移,多形変化,共晶変化,同素体変化などにこの語が用いられる。
転移
てんい
metastasis
医学用語。病原体や悪性腫瘍細胞が,血液またはリンパの流れに乗って離れたところにある臓器に運ばれ,そこに原発巣と同一の病変を起すこと。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
知恵蔵
「転移」の解説
転移
がん細胞の特徴は、活発な増殖力と組織破壊力にあり、自らの母組織を破壊し、周囲の臓器にも浸潤する。血管を破ったがん細胞が血流と共に遠い臓器に飛び火し、リンパ管を伝ってリンパ節にがん病巣をつくることを転移という。その経路によって、血行性転移、リンパ行性転移と呼ぶ。がんの中には、転移しやすいがん・しにくいがん、また、転移しやすい臓器・しにくい臓器がある。血行性転移は、肺、肝臓、脳に多い。転移が先に発見され、元のがんがなかなか見つからないこともある。
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
転移
テンイ
transition
固体物質(単体および化合物)の集合状態が変化する現象.このとき,結晶形の変化,同素体への変化が起こる.この変化は一定圧力下では一定温度で起こり,この温度を転移点という.また,このとき,吸収または放出される熱を転移熱という.[別用語参照]多形
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
転移
がん細胞は増殖して血管網などをつくって病巣を広げていく力をもっています。このがん細胞が、リンパ液や血液の流れに乗って、あるいは腹腔内にばらまかれ るような形で、他の組織や器官に飛び火することを「転移」といいます。
出典 PET検査ネットPET検査用語集について 情報
世界大百科事典(旧版)内の転移の言及
【精神分析】より
…また空想をも含む自由な連想が奨励されること,治療者の受容的態度,安楽な寝椅子の使用などの条件によって,患者は心理的に[退行]し,彼の幼年時代の重要な人物(主として両親)に向けた感情や欲求が再現し,これを治療者にさし向けてくる。この現象は[転移](感情転移)とよばれるが,しばしば言語的表出よりも挙動によって表現される。たとえばかつて父親に強いおびえを抱いていた患者は温和な治療者に対してもおびえた振舞を示す。…
※「転移」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」