腹部実質臓器虚血

内科学 第10版 「腹部実質臓器虚血」の解説

腹部実質臓器虚血(腹部血管疾患)

(2)腹部実質臓器虚血
a.脾梗塞(splenic infarction)
概念・原因
 血栓症や塞栓症によって,脾動脈が閉塞して生じる.
臨床症状・診断・治療
 急激な左側腹部痛を生じる.診断には造影CTが有用だが,急性期は治療不要で,原疾患(心内血栓,血管病変,凝固亢進状態など)の治療が優先される.遅発性出血や膿瘍形成例では,ドレナージや手術の適応となる.
b.肝梗塞(hepatic infarction)
概念・原因
 限局性の虚血性肝疾患で,肝全体の虚血による虚血性肝炎とは区別される.肝臓は肝動脈と門脈の二重血流支配のため,容易には肝梗塞に至らない.原因は,経皮的動脈化学塞栓療法(TACE),肝移植などの手術後,感染性心内膜炎,腫瘍塞栓,妊娠中毒症などがある.
臨床症状・診断・治療
 症状に乏しく,画像所見で偶然発見されることもある.診断には造影CT,MRIが有用である.感染がなければ治療不要だが,妊娠中毒症合併例(HELLP症候群)は予後不良で,緊急手術となる.[矢野智則]
■文献
嶺 貴彦,田島廣之,他:ER必携 腹痛の画像診断 急性腹症の画像診断 血管性病変.画像診断,28: 1320-1333, 2008.
宗景匡哉,花崎和弘:肝・胆道系症候群(第2版)その他の肝・胆道系疾患を含めて肝梗塞.日本臨床(0047-1852) 2010. 10;別冊(肝・胆道系症候群 第2版);99-102.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報