改訂新版 世界大百科事典 「被覆空間」の意味・わかりやすい解説
被覆空間 (ひふくくうかん)
covering space
位相空間Xから位相空間Xへの連続写像p:X→Xがあって,Xの各点xに対し,xを含むXの開集合UとXの開集合族{Ũλ;λ∈Λ}が次の条件を満たすようにとれるとする。(1)pによってUのなかにうつるXの点はいずれかのŨλに含まれる。(2)各ŨλはpによってUの上に同相にうつる。(3)λ≠μならばŨλとŨμは交わらない。このときXはXの上の被覆空間であるといい,p:X→Xを被覆写像という。Xが連結ならば,Xの点xのとり方によらずp⁻1(x)の個数は一定であるが,これが有限数nのとき,XはXをn重に被覆するという。例えば,数直線Rから半径1の円周Cへの写像pをp(t)=(cost,sint)により定義すれば,すなわちRをCの上にのった無限に続いた〈ら線〉とみなせば,RはC上の被覆空間になる(図1)。また,nを自然数として,p:C→Cをp(cost,sint)=(cosnt,sinnt)で定義すれば,CはCをn重に被覆する(図2)。被覆空間は数学の種々の分野で本質的な役割を演ずる。
執筆者:中岡 稔
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報