汚染物質が国境を越えて発生源から遠く離れた地域まで運ばれること。大気経由で汚染物質が運ばれることが多いが、河川経由や汚染物質を取り込んだ魚などの移動による汚染もある。ヨーロッパ諸国や北米では早くから越境汚染が問題となっており、酸性雨等の越境大気汚染の防止対策を義務付けるとともに、酸性雨等の被害影響の状況の監視・評価、原因物質の排出削減対策などを定めた「長距離越境大気汚染条約」(LRTAP:Convention on Long-range Trans-boundary Air Pollution)が1983年に発効している。日本では、これまで越境汚染は特に問題とならなかったが、近年、韓国や中国の目覚しい経済発展に伴って発生した多量の大気汚染物質が偏西風などに乗ってくるのではと越境汚染が問題になりつつある。2007年春から夏に、西日本を中心にかつてない広い地域で光化学スモッグ注意報が発令されたとき、日本では汚染物質の排出が減っているので、環境対策が遅れている中国のせいではないかと大きく報道された。このため、国際的な観測ネットワークの構築や、汚染物質の発生と移動のメカニズムの解明、予測技術の向上などが緊急の課題となっている。