造血幹細胞移植の適応の考え方

内科学 第10版 の解説

造血幹細胞移植の適応の考え方(造血幹細胞移植術)

 造血幹細胞移植(特に同種移植)は,強い合併症と,移植関連死亡と,長期的なQOLの低下のリスクと引き替えにして,原疾患の根治の確率を高めようという(あるいは生存期間を延長しようという)治療法であり,その適応は慎重に検討しなければならない.絶対的な移植適応というような判断ができる場面はむしろ少なく,生存率のみならず,長期的なQOLなどの要素も含めて,患者や患者家族と十分な情報を共有しながら移植の是非を考えていくということが重要であろう.
 移植適応の判断に大きく影響を及ぼす臨床試験の情報としては,自家移植については通常の化学療法との無作為割付比較試験,同種移植についてはHLA適合同胞ドナーがいる患者を同種移植群に割り付け,ドナーがいない患者を自家骨髄移植群と化学療法群に無作為に割り付けるというデザイン(genetic randomization)の臨床試験である.同胞の数が世代によって異なること,ドナーなし群では原疾患が再発した場合にはHLA適合同胞がいないため不利な治療選択肢しかないこと,QOLの補正がされていないことなどの問題がある.[神田善伸]
■文献
Koreth J, Schlenk R, et al: Allogeneic stem cell transplantation for acute myeloid leukemia in first complete remission: systematic review and meta-analysis of prospective clinical trials. JAMA, 301: 2349-2361, 2009.
Cutler CS, Lee SJ, et al: A decision analysis of allogeneic bone marrow transplantation for the myelodysplastic syndromes: delayed transplantation for low-risk myelodysplasia is associated with improved outcome. Blood, 104: 579-585, 2004.
Oliansky DM, Czuczman M, et al: The role of cytotoxic therapy with hematopoietic stem cell transplantation in the treatment of diffuse large B cell lymphoma: update of the 2001 evidence-based review. Biol Blood Marrow Transplant, 17: 20-47 e30, 2011.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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