造血細胞の発生

内科学 第10版 「造血細胞の発生」の解説

造血細胞の発生(総論1:造血のしくみ)

 個体の発生過程における最初の造血は胚の体外に存在する卵黄囊で起こる.胎生25日頃より卵黄囊壁内に血島とよばれる造血巣が認められ,この造血を一次造血とよぶ.この時期に産生される赤血球は脱核せず,グロビン遺伝子も成体型のものとは異なる.一次造血に続いて,成体型の造血(二次造血)の起源となる真の造血幹細胞が大動脈臓側中胚葉(paraaortic splanchnopleural mesoderm:P-Sp)領域で発生する.P-Sp領域は後にAGM領域(aorta-gonads-mesonephros,大動脈-生殖巣-中腎の発生する胚領域)とよばれる組織に発達する.造血幹細胞はその後AGM領域から胎児肝臓へ移動し,肝臓において赤血球系,白血球系,血小板系の3系統の造血が開始される.胎児肝における造血は妊娠40日頃より始まり,妊娠3~6カ月では主要な造血器となる.妊娠後期には造血幹細胞は肝臓から骨髄へ移動し,出生以降の造血のほとんどは骨髄で行われる.出生直後はほとんどすべての骨髄で造血が行われるが,次第に長管骨での造血は消退し,造血巣は体の中心部(頭蓋骨,胸骨,肋骨,脊椎骨,骨盤など)の骨髄に限局してくる.出生直後は肝造血による赤血球が主体をなすので,赤血球中のヘモグロビンもHbF[α2γ2]が優位であるが,生後2カ月でHbA[α2β2]が優位となり,生後10カ月でHbFは痕跡程度となる.[松村 到]
■文献
Abboud CN, Lichtman MA: Structure of the marrow and the hematopoietic microenvironment. In: Williams Hematology, 7th ed (Lichtman MA ed), pp35-72, McGraw-Hill, NY, 2006.
Dacie JV, Lewis SM: Practical Hematology, 7th ed, Churchill Livingstone, Edinburgh, 1991.
Kipps TJ: The lymphoid tissues. In: Williams Hematology, 7th ed (Lichtman MA ed), pp73-81, McGraw-Hill, NY, 2006.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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