骨の中心部にある骨内膜で区画された軟らかい部分のこと。ここは血球の産生場所であり、成人の場合、造血は全身にある骨髄で行われている。体重の4.5%が骨髄である。成人の長管骨(大腿骨(だいたいこつ)など)を縦に切開すると、関節に近いところは赤色をしており、中央は黄色をしている。赤いところは赤色髄とよばれて血球をつくる役割を果たし、また黄色いところは黄色髄(脂肪髄)とよばれ、脂肪が蓄えられている。空中を飛ぶ鳥の骨髄は中空になっているが、飛ばない鳥では脂肪が詰まっている。
幼い年代では、骨髄はすべて赤色髄であるが、年をとるにしたがって脂肪髄が増加し、成人では、頭蓋骨(とうがいこつ)、脊椎骨(せきついこつ)、腸骨、肋骨(ろっこつ)、胸骨などの扁平(へんぺい)骨の骨髄がおもな造血場所になる。しかし、造血がいっそう必要なときには、脂肪髄が赤色髄に変わって造血を行うことができる。顕微鏡で見ると、脂肪髄は大小の脂肪細胞の集まりであり、また赤色髄では細網細胞に囲まれた網の目の中で各種の血球の産生が行われており、赤血球の幼若型(赤芽球)、顆粒(かりゅう)球の幼若型(骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球)、血小板の母細胞(骨髄巨核球)、さらにリンパ球、単球、形質細胞が見られる。なお、骨髄の中には血管が縦横に走っており、静脈の一部が袋状に拡大して洞状になり、その中に、幼若細胞から成熟した血球が、アメーバ様運動によって内皮の間をくぐり抜けて入り、血流にのって全身に運ばれていく。しかし、未熟な血球はけっしてここを通過することはできない。白血病その他の病気で、この洞が壊されると、若い血球(芽球)が血中に入り込むことになる。
各血球の産生は、造血幹細胞から赤血球、白血球(顆粒球とリンパ球)、骨髄巨核球、単球の母細胞がつくられ、それが何回かの細胞分裂を行いながら成熟していき、赤血球ではその間にヘモグロビンが合成され、顆粒球ではそれぞれの顆粒が備わり、巨核球からは血小板がつくられ、血中に流れていく。またリンパ球は、胸腺を通るとTリンパ球になり、ブルザ相当器官(人体では腸のリンパ組織と考えられる)を通るとBリンパ球となって、生体を外敵から守る力(免疫力)の源泉となる。単球は成熟すると、血中と組織の中に入って貪食(どんしょく)、異物処理を行う。また、骨髄の中には肝臓、脾臓(ひぞう)と並んで鉄が貯蔵されている。
[伊藤健次郎]
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骨の内部にあって,骨髄腔や海綿質腔を満たす軟らかい組織。赤骨髄(赤色骨髄ともいう)と黄骨髄(黄色骨髄ともいう)とがあり,前者は造血にあずかる。胎児や生後すぐには赤骨髄のみからなるが,成長するにつれて徐々に脂肪化して黄骨髄におきかわり,造血能を失う。成人の骨髄は平均2600gあり,その半量が赤骨髄,残りが黄骨髄で,長骨の骨端や,胸骨のような扁平骨の骨髄は生涯赤骨髄のままである。
骨髄には洞様毛細血管sinusoid capillaryと呼ばれる太い毛細血管が走り,血管の外は細網繊維が網をつくり,その網目に数多くの造血細胞がつまっている。造血細胞には種々の段階がある。すなわち,未分化間葉細胞,血球芽細胞,赤芽細胞,骨髄芽細胞,単芽細胞,リンパ芽細胞,巨核芽細胞などから赤血球,顆粒白血球,単球,リンパ球,巨核球へ分化する各段階の細胞のほか,完成した血球,形質細胞,細網細胞などが存在する。形態学的には,それぞれの芽細胞を見分けることは困難である。このうち完成した血球だけが毛細血管内皮をくぐり血中へ出て全身へ向かう。骨髄における各造血細胞の形態や比率をしらべることは臨床上きわめてたいせつであり,そのために骨髄穿刺(せんし)によって赤骨髄をとるが,胸骨から採取することが多い。
→骨
執筆者:藤田 尚男
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…形態学的に,これらの動物では赤血球と栓球はともに有核細胞で,ともに血管内で産生される。これに対し哺乳類の赤血球は無核細胞で,栓球はなく,その機能は骨髄巨核球の胞体の一部からなる血小板によって行われる。哺乳類の赤血球および血小板はともに,血管外の造血基質にある母細胞から産生され,血管内に流入したものである。…
…緻密質というのは骨質がすきまなく固まっているもので,一般に骨の表層部はうすい緻密質でできており,また長骨の中央部(これを〈骨幹〉という)は厚い緻密質からなっている(図1)。体肢の長骨では骨幹の内部に〈骨髄腔〉という広い空所があり,骨髄bone marrowを入れている。海綿質というのは骨質の間に無数の小さいすきまがあって,スポンジのような構造をしたもので,一般には骨の深部に見られるが,長骨の両端の部分(これを骨端という)にはとくによく発達している。…
※「骨髄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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