量子波素子(読み)りょうしはそし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「量子波素子」の意味・わかりやすい解説

量子波素子
りょうしはそし

量子は波の性質と粒子の性質をあわせもつものであるが、このうちの、波の性質が顕著に現れる領域を利用したスイッチング素子。量子である電子はメゾスコピック領域では波のようにふるまう量子波であるが、この領域での電子は電子波とよばれることが多い。

 電子は真空の世界でも波の性質が現れ、電子線ホログラフィーなどに利用されている。固体内での電子波は、磁界によって位相が変わることから超伝導量子干渉素子や電子波デバイスを生んでいる。また、超格子でつくった量子井戸では、電子は波として二次元的に広がるため、HEMT、共鳴トンネルトランジスタの高速動作を可能にする。超伝導トランジスタは超伝導体が近づくとお互いの電子波がしみ出して重なるのをゲート電圧で制御できることを利用したもので、スイッチング速度はピコ秒(10-12秒)と速く、消費電力は少ない。電子波デバイスは、入力信号を超格子の2経路を通る電子波に分け、一方を磁界で位相を変えて制御し、双方をまとめた干渉波を出力としている。

[岩田倫典]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例