静電誘導トランジスタ(読み)せいでんゆうどうトランジスタ(英語表記)static induction transistor

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「静電誘導トランジスタ」の意味・わかりやすい解説

静電誘導トランジスタ
せいでんゆうどうトランジスタ
static induction transistor

電界効果トランジスタ一種ゲートの電位障壁点とソースの間の寄生直列抵抗を小さくして,ドレイン電圧電流特性に非飽和特性 (3極管特性) を持たせたもの。大電流動作が可能なので,特にパワー素子として用途がある。通常の電界効果トランジスタは,ゲートの長さが比較的大きいので,ドレイン電流を制御するゲート電位障壁点 (ゲート領域のドレインに近い部分) とソースとの間の寄生直列抵抗が無視できない。この直列抵抗による負帰還の効果でドレイン電圧を上げていくとドレイン電流が飽和し,いわゆる5極管特性を示す。これに対して本トランジスタは,構造に工夫を加えてゲートの長さを極力小さく抑え,その結果ソースとの間の直列抵抗を減らして電流飽和を回避してあり,大電流動作が可能となる。また,このトランジスタは,電界効果動作なのでバイポーラトランジスタにおける少数キャリア拡散の過程がない。したがって,ベース幅の大きい高耐圧バイポーラトランジスタと比較したとき,同一耐圧でも動作速度が速い。この利点を生かして,高周波加熱用のマイクロ波源や,超音波発生用の電力発振源などに使われている。

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