…駅家(うまや)のある村落から駅馬の数に対応して指定されたので,山陽道や東海・東山両道のように1駅あたりの駅馬の多い地方では,しばしば駅戸だけで50戸1郷の行政村落を構成したらしく,〈駅家郷〉とよばれた郷が少なくない。駅戸は,中流以上の戸ならば1戸につき1匹ずつ駅馬を飼い,貧富を問わず成年男子は駅子(えきし)という馬丁として駅馬に乗る官人を次の駅まで送迎し,駅田(えきでん)を無償で耕作し,駅稲(えきとう)を春に貸し付けられて秋には5割に及ぶ利稲とともに駅に納めるなどの義務を負っているので,庸(よう)と雑徭(ぞうよう)が免除される。駅長は豊かな駅戸のうちで管理能力のある者が任命され,調・庸・雑徭が免除されるが,不注意で駅馬や馬具が欠損すると弁償の責任を負わされる。…
…大化改新後,7世紀後半の律令国家形成期には,駅鈴によって駅馬を利用しうる道を北九州との間だけでなく東国へも延ばしはじめたようであるが,8世紀初頭の大宝令では唐を模範とした駅制を全国に拡大することとした。すなわち朝廷は特別会計の駅起稲(えききとう)・駅起田(えききでん)(後の養老令では駅稲・駅田)を各国に設置させ,これを財源として畿内の都から放射状に各国の国府を連絡する東海・東山・北陸・山陰・山陽・南海・西海の7道をそのまま駅路とし,駅路には原則として30里(約16km)ごとに駅を置かせ,駅ごとに常備すべき駅馬は大路の山陽道で20匹,中路の東海・東山両道で10匹,他の4道の小路では5匹ずつとし,駅の周囲には駅長や駅丁を出す駅戸を指定して駅馬を飼わせ,駅家(うまや)には人馬の食料や休憩・宿泊の施設を整え,駅鈴を貸与されて出張する官人や公文書を伝送する駅使が駅家に到着すれば,乗りつぎの駅馬や案内の駅子を提供させることとした。その結果,もっとも速い飛駅(ひえき∥ひやく)という駅使は,大宰府から4~5日,蝦夷に備えた陸奥の多賀城からでも7~8日で都に到着することができた。…
※「駅稲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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