(読み)えき

精選版 日本国語大辞典 「駅」の意味・読み・例文・類語

えき【駅】

〘名〙
① 令制で、官道に設置された宿場。官人のために駅家(えきか)が人馬を継ぎ立て、宿舎、食料を供した。鎌倉以降衰え、代わって宿(しゅく)が発生した。うまや。うまつぎ。〔令義解(718)〕
② 鉄道の停車場。列車を停止させ、旅客、貨物を取り扱う場所。
※尋常小学読本(明治三六年)(1903)七「汽車が来る。駅(エキ)の名呼ぶ声。とびらのあく音」
[語誌]②について、明治のはじめには、「ステーションステンショ)」「停車場(ていしゃば・ていしゃじょう)」が①の旧来の駅と区別して使われたが、しだいに音節数の少ない「駅」が一般的になる。

うま‐や【駅】

〘名〙 (「馬屋」の意から) 令制で、中央政府と地方諸国の連絡のために、諸道に三〇里(現在の四里=約一六キロメートル)ごとに置かれた設備。駅馬を置き、財源として駅田が与えられ、それらの管理のために、駅長や駅子がいた。えき。
※書紀(720)天武元年六月(北野本訓)「隠(なばり)の郡(こほり)に到りて隠の駅家(ムマヤ)を焚く」
※枕(10C終)二四二「むまやは 梨原。望月のむまや」

むま‐や【駅】

〘名〙 ⇒うまや(駅)

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デジタル大辞泉 「駅」の意味・読み・例文・類語

えき【駅〔驛〕】[漢字項目]

[音]エキ(漢) [訓]うまや
学習漢字]3年
宿場。馬継ぎ場。「駅逓駅伝駅路宿駅
電車・列車などの発着する所。「駅員駅長駅頭/各駅・着駅

うま‐や【駅/駅家】

律令制で、諸道の30里(約16キロ)ごとに置かれた施設。駅馬を置き、駅使に食料・人馬を供する駅長駅子えきしがいた。財源として駅田が給与された。えき。→えき駅制

えき【駅】

列車を止めて、乗客の乗降、貨物の積み降ろしをする所。停車場。
律令制で、官道に設けて公の使いのために人馬の継ぎかえや宿舎・食糧などを提供した所。うまや。
[補説]明治初年に鉄道が敷かれた時は新橋ステーションといい、以後、新橋停車場、新橋駅へと変わった。
[類語]停車場ステーションターミナル停留所ストップ

はいま【駅/駅馬】

はゆま」の音変化。
「筑紫の国より―に乗りてまうきまうさく」〈皇極紀〉

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改訂新版 世界大百科事典 「駅」の意味・わかりやすい解説

駅 (えき)

古代,中世においては,交通制度の一つの形態である駅伝の制にもとづいて街道に置かれた人馬の乗継所をさす(駅伝制)。これに対し,現代の駅は,主として鉄道の営業線において,列車を停車させて旅客,荷物,貨物の取扱いを行う場所または施設をさす。本項では,この現代の駅について記述する。

普通鉄道構造規則(運輸省令)により,停車場とは,駅,操車場,信号場をいう,と定められており(停車場),駅とは列車を止めて旅客,貨物を取り扱うために設けられた場所,と定められている。上記は主として施設面に着目した駅の定義であるが,駅は旅客,貨物取扱いの対外的な窓口であり,営業面に着目すれば,鉄道に限らず索道事業(ケーブルカーなど)における乗降場等も含めて駅と呼称することが一般的に定着している。

 日本の鉄道の駅間距離の平均は,都市内の地下鉄道で1km程度,都市内の通勤鉄道で1~2km程度,都市間を結ぶ鉄道で4km程度,新幹線で40km程度である。

JRの場合,1994年度現在で4683ある駅はその取り扱う輸送対象の種類によって一般駅(普通駅),旅客駅,貨物駅に分類される。(1)一般駅 旅客(旅客のみ,または旅客と荷物),貨物の両方を取り扱う駅。古くは旅客,貨物を合わせて取り扱う駅が多かったが,都市周辺における客貨の分離,貨物取扱駅の集約化等もあって一般駅は年々減少している。(2)旅客駅 旅客のみ,または旅客と荷物を取り扱う駅。旅客駅の中には,大都市周辺において最初から電車輸送による旅客専用駅として開業した駅(東京の有楽町,田町など)もあるが,近年では貨物取扱いの廃止に伴い一般駅から旅客駅となった駅が多い。(3)貨物駅 貨物のみを取り扱う駅。セメント石灰石,石油等大量貨物需要発生個所に設置されるもの,大都市周辺の消費物資の集積個所に設置されるものが多いが,近年では,沿線数駅の貨物の取扱いを1ヵ所に集約化して取り扱う貨物ターミナルのような貨物駅が増加している。

 上記の分類とは別に,次のようなJRの駅がある。

(1)民衆駅 駅舎を新築または増改築する場合に,その一部を鉄道業者以外の民間が使用することを前提として,民間資本の導入を得て建築した駅およびその他の施設の総称。第2次大戦後,戦災を受けた駅舎の復旧にあたり,駅舎自体を旅客の乗降だけでなく,さらにひろく都市再開発の中心とすることが鉄道側,地元側双方に有利であることから導入されたもので,日本国有鉄道(現JR)では1950年の東海道本線豊橋駅がその第1号である。71年には日本国有鉄道法施行令が改正され,国鉄の旅客駅(旅客駅と一体として設けられる店舗,事務所等を含む)の建設および管理を行う事業に対して,国鉄が直接投資できることとなり,73年にその第1号として東海道本線平塚駅が生まれ変わり,その後,名古屋,新宿,岡山,博多,小倉,札幌,仙台等主要駅が旅客ターミナル施設として生まれ変わった。なお,現在ではこのような形態の施設は民衆駅と呼ばず,ステーションビル,ターミナルビル,あるいは単に駅ビル等と称されている。

(2)業務委託駅 駅の業務には,乗車券の発売業務,改集札業務等諸種の業務があるが,これらの駅業務を行う鉄道職員をいっさい配置せず,全業務を部外者に委託して運営している駅をいう。駅業務のうち,例えば定期券の発売業務や,荷物の取扱業務等一部の業務のみを部外者に委託している駅も多いが,これらの駅は業務委託駅とはいわない。

(3)地元負担駅(請願駅) 駅設置に要する工事費等を地元負担として設置された駅。駅の設置は周辺地域に利益をもたらす例が多く,こうした開発利益を活用して駅整備を進めることが鉄道事業者,地元の共同利益につながることから,最近ではこの例は比較的多い。1981年10月に開業した総武本線東船橋駅,幕張本郷駅などはこの例である。
執筆者:

駅の最も基本的な機能は,到着や出発など列車の定められた運行を確保することと,旅客の乗車,降車を安全に円滑に行うことである。駅における列車の運行形態には,到着や出発のほかに,通過,待避と追越し,分割と併合(分割は列車の行先が2方向になる場合や,列車の編成両数を減らす場合に列車を二分すること,併合は分割の逆)などがあり,これに応じて必要な線路とプラットフォームplatform(単にホームともいう)の形状(これを配線という)が決まる。ホームは旅客の乗車と降車のための設備で,その大きさは旅客の乗降数,列車の編成長などに左右される。最も単純な配線は,上下各本線に面してホームを設けるもので,1ホームの両側を使うものを島式,2ホームの両内側を使うものを相対式と呼ぶが,一長一短がある。出札,改札,精算,待合せなどの機能を果たし,駅の玄関ともいうべきものが駅本屋(えきほんや)である。ホームと駅本屋とを連絡するため,こ線橋,地下道,階段,エスカレーターなどが必要となる。駅は線路,ホーム,駅本屋の位置関係から,線路,ホームが地表にあり,駅本屋もそれに接して地表にある地平駅,線路,ホームが高架上にあり,その下の空間に駅本屋を設ける高架下駅,線路,ホームが地下にあり,本屋機能の一部も地下に設ける地下駅,線路,ホームが地表にあり,駅本屋をその2階部分に設ける橋上駅に分類される。最近,駅内の自由な通行や横断を可能にし,駅の表側と裏側の街の一体的な発展を目ざすため,地平駅を橋上駅に改良する例が多い。

 貨物駅においては,貨物の積卸しと,貨車の操車が基本的な機能である。貨物の積卸しのためには,積卸線とそれに接して貨物ホームが必要である。貨物ホームには主として小口混載貨物を扱う高床ホームと,コンテナをはじめ一般貨物を扱う低床ホームとが設けられる。その大きさは,貨車の接車所要長,通路側のトラックスペース,荷役機械の作業スペース,貨物の留置スペースなどから決まる。セメント,肥料,石油,紙などの同一物資を運ぶ専用列車を扱う貨物駅には,その扱う物資に応じて専用の積込みあるいは取卸し設備を設けるとともに,流通上のストックポイントとしての機能をももたせる。操車のための設備には仕訳線,組成線,引上線,着発線などがある。操車のみを専門に扱う設備は操車場と呼ばれ,駅とは区別される。
執筆者:

最初の鉄道専用駅舎を備えた路線は,1830年開通のリバプール・アンド・マンチェスター鉄道であった。この鉄道のリバプール終着駅であるクラウン・ストリート駅は,ごく低いホーム,覆屋,駅舎をすでに備えている。ロンドンの最初の鉄道駅はユーストン駅(1835-39,ハードウィックP.Hardwick設計,現存せず)で,ギリシア・ドリス式の駅舎入口をもっていた。駅舎にはしばしばステーション・ホテルが設けられ,この建築様式が駅の性格を示すものとして一般に親しまれたが,駅の構成自体は鉄道の改良にもかかわらず,基本的に20世紀まで同一でありつづけた。ホーム全体に覆屋をかけた最初の駅はニューカスル中央駅(1846-55,ドブソンJ.Dobson設計)である。一般にこの覆屋部分は鉄とガラスを用いて技師により設計され,その前に建つホテルなどを含む駅舎を建築家が設計することが多かった。パリで最初の本格的終着駅は東駅(1847-52,デュケネーF.Duquesney設計)であり,アメリカ最初の例としてはロード・アイランド州プロビデンス駅(1848,テフトT.A.Tefft設計)が知られる。また様式的特徴から名高い駅としては,ゴシック様式を用いたロンドンのセント・パンクラス駅(1868-69,G.G.スコット設計),オランダ・ルネサンスの煉瓦と石貼りの様式によるアムステルダム中央駅(1881-89,カイペルス設計),古典主義様式のニューヨークペンシルベニア駅(1906-10,マッキム・ミード・アンド・ホワイト設計,現存せず),近代建築を模索した様式のヘルシンキ駅(1910-20,G.E. サーリネン設計),近代建築の名作とされるローマのテルミニ駅(1951竣工,モントゥオリE.Montuori,カリーニL.Calini設計)がある。駅舎部分が建築的意匠を凝らされるのに対して,ホームの覆屋部分は鉄骨構造技術の粋を集めたもので,前記セント・パンクラス駅の覆屋(バーローW.H.Barlow設計)は約74mの径間をもち,当時世界最大の径間を誇った。鉄道駅は交通の結節点として都市計画上重要な施設と見なされ,古くはナポレオン3世治下のオスマンによるパリ改造計画でも,北駅と東駅からオペラ座に至る幹線道路が建設されたのをはじめ,駅前広場station placeを設ける例も多い。

 日本における最初の本格的な駅は,1872年日本で初めて開通した鉄道(横浜~新橋間)の終着駅である新橋停車場(1871-72,ブリジェンスR.P.Bridgens設計,現存せず)で,このほか都市計画的配慮のもとに設計された東京駅中央停車場(丸ノ内口,1907-14,辰野金吾設計),終着駅のホーム形式をよく示す上野駅(1932,鉄道省設計)も有名である。現存最古の駅舎は旧長浜駅(現在鉄道記念物長浜駅舎)(1883,シェルビントンT.R.Shervintonほか鉄道寮技師設計)である。
執筆者:

ヨーロッパやアメリカの駅も,本来は〈うまや〉,すなわち駅馬車が発着したり,馬を替える場所であった。19世紀までの都会には,各方面に向かう長距離駅馬車発着所が分散してあり,多くの場合それは宿屋の中庭であった。宿屋の1階は食堂,酒場(バー),切符売場,待合室であり,2階以上が宿泊施設となっていた。

 19世紀に急速に発達した鉄道は,欧米ではほとんど私鉄であったから,各鉄道は大都会の周辺にそれぞれのターミナル駅を設けることしかできなかった。例えば鉄道誕生の地であるイギリスの首都ロンドンには,ユーストン(北西方面行),ビクトリア(南方面行),パディントン(西方面行)など,10以上のターミナル駅があるが,ロンドンと名付けられる中央駅はない。これはパリ,ウィーン,モスクワについても同じである。駅の名としてしばしば,そこから出発する線の終点の都市の名が使われることがあるので,例えばモスクワにはモスクワ駅はないがサンクト・ペテルブルグ駅があり,逆にサンクト・ペテルブルグにはモスクワ駅があってサンクト・ペテルブルグ駅がない,という面倒な事態となる。

 もっと面倒な思いをするのは,こうした都市を貫通する旅行者で,北からロンドンに着いた客は,一度駅から出て地下鉄,バス,タクシーその他に乗りかえ,南へ行く列車の出発駅で列車にまた乗りかえねばならない。こうした不便を解消するために,アメリカの都市では多くの私鉄が共同で使うユニオン・ステーションunion stationが見られる。ヨーロッパでも最近は,主要幹線が国有化されて大規模な中央駅が多く見られるようになった。ローマのテルミニ駅はその好例である。

 駅馬車発着所時代のなごりから,都市のターミナル駅の上層階がホテルになっている例が,特にイギリスで多い。日本の東京駅の丸ノ内口の駅舎は,建築様式だけでなく,この習慣もヨーロッパに見習っている。このように考えると,欧米の大都市の駅とは,19世紀の鉄道全盛の時代において,単なる列車乗降以上の多様な役割を果たしていたことがわかる。市民の憩いの場であり,集会場でもある。出会いと別れの場所であり,人間と人間の関係が形成されたり絶ち切られたりする場所である。都市の住人にとっても,都市にやって来る地方の人にとっても,そこは未知なるものを発見する冒険の出発点であり,成功あるいは失敗の後に帰る地点でもある。

 T.ゴーティエの言葉によると,駅とは〈近代産業の殿堂で,そこでは今世紀(19世紀)の宗教,すなわち鉄道の宗教が顕現している。この新しい人間の宗教の大聖堂は諸国民の集合所であり,すべてが集まる中心であり,世界の果てまでレールの光線を放射している巨大な星の核〉なのである。駅は,最新の建築技術の粋を集めた新しいバベルの塔ともいえる。フランスのマネやモネ,イギリスのフリスWilliam P.Frith(1819-1909)ら19世紀の画家たちが駅を題材に選んだのも当然であった。
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日本歴史地名大系 「駅」の解説


おおのえき

古代、和泉国に置かれた南海道の駅。駅名は「延喜式」(兵部省)の諸国駅伝馬条に「日部、唹各七疋」とみえる。南海道は都の変遷に伴ってその道筋も大幅に変化するが(→南海道、「延喜式」の頃には日部くさべ(現堺市)から和泉国府(現和泉市)に至り、和泉国の海岸線を南下、当駅を経て、紀伊国萩原はぎわら(諸説あるが雄ノ山峠を下った現和歌山県那賀郡岩出町辺りに比定するのが有力)に至っている。唹駅は現在男里おのさとに比定する説が有力であるが、前掲道筋がのちの熊野街道の道筋とすると男里はその道筋から外れることとなり、比定地として疑問が生れる。

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デジタル大辞泉プラス 「駅」の解説

森村誠一の長編ミステリー。1987年刊行。牛尾刑事シリーズ。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【停車場】より

…停車場には,運転上必要なさまざまな業務機関として機関区,電車区,保線区,電気区などが配置される場合が多く,鉄道の輸送業務の基地とも称すべきものである。停車場をその業務内容によって,列車を停止させ旅客または貨物の取扱いを行う,もっぱら列車の組成または車両の入換えをする操車場,列車の行違い,待合せをするための施設で,旅客,貨物は扱わない信号場の3種に分類することもあるが,一般には駅のことを停車場という場合が多い。【古橋 正雄】。…

※「駅」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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