日本大百科全書(ニッポニカ) 「高崎煙草」の意味・わかりやすい解説
高崎煙草
たかさきたばこ
上州高崎の南方山名(やまな)村(群馬県高崎市)を中心に栽培されていたタバコ。江戸時代、同村光台寺境内の畑でつくられたのが始まりと伝え、地元では山名光台寺煙草と称した。その味が「香気他(こうきた)に異なり、口中佳味(こうちゅうかみ)にして奇(き)なる名葉」(橘薫(たちばなかおる)著『煙草百首』、江戸後期)であったため、近郷の農民が相次いで栽培するようになった。それが高崎の市(いち)で売買されたことから、高崎煙草の名で知られるようになり、明治初年までは藍葉(あいは)とともに農家の主たる現金収入源であった。なお高崎の南西方寺尾村館(たて)(同市)を中心に栽培されていた館煙草も、吉野・服部(はっとり)煙草と並ぶ名葉とされ、全国にその名が知られていた。
[井上定幸]