知恵蔵「BOPビジネス」の解説
BOPビジネス
BOPとは「ベース・オブ・ピラミッド」または「ボトム・オブ・ピラミッド」の略で、経済ピラミッドの底辺を指す。世界銀行の関連機関である国際金融公社(IFC)は、BOP層は途上国を中心とした約45億人、世界人口の約7割に該当し、その市場規模は5兆ドルに上るとしている。少子高齢化などにより先進国の国内市場が縮小傾向にある中、成長余力があり、将来的な所得拡大が見込めるBOP層は、有望市場として世界的に注目されている。
BOPビジネスは欧米企業が先行しているといわれている。社会的課題の解決と利益確保を両立させている好例として、英国とオランダに本社がある食品・日用品大手のユニリーバのケースがある。同社は、低所得層の購入のハードルを下げようと、東南アジアで通常商品を小分けした洗剤・シャンプーを販売。農村部の女性を販売代理人として育成し、女性の自立を支援している。それと同時に、現地の政府と協力して手洗いによる感染症防止を啓発する事業を実施、石けんの販売網を広げることで収益を上げている。
日本では、経済産業省が2010年、「BOPビジネス支援センター」を設立し、BOPビジネスへの参入を目指す企業やNGO、NPOなどの支援を始めた。また独立行政法人国際協力機構(JICA)も10年、企業への支援制度「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」をスタートさせ、16年までに延べ114件の事業を採択した。17年からは「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」として、BOPビジネスを含む世界共通の行動目標「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献する企業を支援している。
日本の企業では、大手化学メーカー、住友化学が糸に防虫剤を練り込んだ蚊帳を開発してアフリカ諸国などに供給、経済的にマラリア予防ができる点などが評価され、需要が拡大した例がある。
(南 文枝 ライター/2018年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報