イクメン(読み)いくめん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イクメン」の意味・わかりやすい解説

イクメン
いくめん

育児を楽しみ、積極的に行う男性、または、将来そのような人生を送ることを望む男性の略称で、イケメン(イケてるメンmen、またはイケてる面(顔)の両説あり)をもじった造語育メン、育menとも表す。2007年(平成19)ごろから女性誌や育児雑誌にイクメンをテーマにしたウェブサイトや男性の子育てを扱った記事が頻繁に掲載されるようになった。当初育児休業基本給付金などの制度を利用して育児休暇育休)を申請した男性や子育てを趣味にする男性に限って使われることが多い呼称であった。その後、若い父親の育児が社会に浸透するにつれ、子育てする男性すべてを表す意味でも使われるようになった。百貨店やスーパーなどには、男性用の子育て商品をそろえたイクメングッズコーナーが定着NHKの長寿番組『おかあさんといっしょ』は、放送開始から54年を経た2013年4月より『おとうさんといっしょ』という別番組の放送を開始した。

 厚生労働省は、2009年に育児・介護休業法を改正フランスドイツスウェーデンなどヨーロッパの国々で一般的な育休の利点を取り入れ、父親と母親がそれぞれに育休をとりやすくする新制度として2010年6月末から、父母がともに育休をとる場合、休業期間を延長できるパパ・ママ育休プラスを施行した。この制度に合わせ、イクメンの普及活動や情報発信を行う「イクメンプロジェクト」を発足させた。また、広島県知事の湯崎英彦(1965― )がイクメンを目ざすことを県議会で宣言して育休を取得し、話題となった。この制度により、2010年度に1.38%であった男性の育児休業取得率(民間企業)は、2011年度には2.63%へと大きく伸びた。国は男性の育児休業取得率を2020年度までに13%に引き上げ、女性に育児を強いる実情の改善を目ざすとしている。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「イクメン」の解説

イクメン

「イクメン」とは「子育てする男性(メンズ)」の略語。単純に育児中の男性というよりはむしろ「育児休暇を申請する」「育児を趣味と言ってはばからない」など、積極的に子育てを楽しみ、自らも成長する男性を指す。実際には、育児に積極的に参加できていなくても、将来的にそうありたいと願う男性も含まれる。2010年6月、長妻昭労働大臣が少子化打開の一助として「イクメンという言葉を流行(はや)らせたい」と国会で発言し、男性の子育て参加や育児休業取得促進などを目的とした「イクメンプロジェクト」を始動させたのをきっかけに、同語は一気に浸透した。ちょうど、前年に改正された育児・介護休業法施行とほぼ同時期。長妻大臣の言にもあるように、世界的に見ても、日本の男性の育児休暇取得率は1.23%(女性の育児休暇取得率は9割)ときわめて低い。そこで、厚労省は「子育て中の働き方の見直し」や「父親も子育てできる働き方の実現」といった改正点を新たな育児・介護休業法に盛り込むことで、男性の育児休暇取得率を2017年度には10%、2020年度には13%に引き上げることを目標としている。また同時に、第1子出産後の約7割の女性が退職するなど、水準が低い女性の継続就業率も、男性が育児休暇を取り女性の育児負担を減らすことで、その率を高める狙いもある。今後、「イクメン」やイクメンを支援するサポーター企業がどんどん増えれば、妻である女性の生き方や子どもを取り巻く環境、家族のあり方は変わる。ひいては、会社や社会にも良い変化をもたらすというのが長妻大臣や厚労省の掲げるビジョンでの骨子である。「イケメン」をもじった軽やかな語感に反して、「イクメン」に寄せられる期待は重いと言えるだろう。

(西村由起子  ライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

人事労務用語辞典 「イクメン」の解説

イクメン

「育児をするメンズ(男性)」の略語。単に育児中の男性というだけでなく、進んで育児休暇を取得するなど子育てを積極的に行う男性や、育児を楽しみ自らも成長しようとする男性、または将来的にそうありたいと考えている男性のことを、「イケメン」をもじって「イクメン」と称します。
(2010/11/8掲載)

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について 情報

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