化学辞典 第2版 「イソシアン酸エステル」の解説
イソシアン酸エステル
イソシアンサンエステル
isocyanic ester
イソシアナートともいう.RN=C=O(Rは炭化水素基).シアン酸エステルにはn-シアン酸エステルROC≡Nとイソシアン酸エステルRN=C=Oの2種類が考えられるが,前者は不安定な化合物である.合成するには,以下のような方法がある.
(1)硫酸アルキルをシアン酸カリウムと蒸留する.
RSO4K + KNCO → RNCO + K2SO4
(2)低温でヨウ化アルキルにシアン酸銀を作用させる.
RI + AgNCO → RNCO + AgI
(3)アルキルアミンにホスゲンを作用させて,脱塩化水素する.
RNH2 + COCl2 → RNCO + 2HCl
(4)ジアゾニウム塩にシアン酸カリウムと銅粉を作用させる.
イソシアン酸メチルCH3NCO(沸点44 ℃),イソシアン酸エチルC2H5NCO(沸点60 ℃)などは催涙性刺激臭をもつ液体で,放置するとすみやかに重合して,イソシアヌル酸エステルとなる.水と反応して対称型の尿素誘導体を,アルカリ性で加水分解すると第一級アミンRNH2と二酸化炭素を生成する.アンモニアまたはアミンと反応して尿素誘導体を生じ,アルコール,フェノールと反応してウレタンを生じる.ジイソシアン酸エステル(ジイソシアナート)類のウレタン生成反応を利用して,種々の高分子材料が製造される.イソシアン酸フェニルはアルコール,フェノールなどの定性確認に使われる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報