日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウレタン」の意味・わかりやすい解説
ウレタン
うれたん
urethane
カルバミン酸エステルH2NCOORおよびそのN-置換体の総称の場合と、狭義にはカルバミン酸エチルをいう場合とがある。遊離のカルバミン酸H2NCOOHは実在しないが、そのエステルは安定な化合物として存在する。アルコールあるいはフェノールにクロロシアン、塩化カルバモイルあるいは尿素を反応させて得られる。白色の結晶体で、アルカリの作用でアルコール、二酸化炭素およびアンモニアに分解する。
カルバミン酸エチルはエチルウレタンともいう。白色の柱状結晶。エタノール(エチルアルコール)と尿素とを加熱するか、炭酸ジエチルあるいはクロロ炭酸エチルにアンモニアを作用させてつくる。水、アルコール、クロロホルムに易溶、エーテルに可溶。催眠作用があるが、習慣性が強いため、現在では催眠薬としては用いられていない。細胞分裂を抑制する作用があり、抗腫瘍剤(こうしゅようざい)として使用される。また殺虫剤、動物用麻酔剤としても用いられる。
[山本 学]