ホスゲン(読み)ほすげん(英語表記)phosgene

翻訳|phosgene

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホスゲン」の意味・わかりやすい解説

ホスゲン
ほすげん
phosgene

カルボニルの塩化物で、正式名は塩化カルボニル。一酸化炭素と塩素とを、活性炭触媒として60~150℃で反応させると得られる。常温では無色気体ベンゼントルエン、四塩化炭素に易溶。水にはわずかに溶けて塩酸と二酸化炭素に加水分解する。

  COCl2+H2O―→2HCl+CO2
 反応性に富む物質で、水酸化アルカリ、金属酸化物、アンモニアアミンなどいろいろな物質と反応する。熱すると分解して一酸化炭素と塩素になる。きわめて毒性が強く、戦時には毒ガスとして使用されたこともある。吸入すると催涙(さいるい)、くしゃみ呼吸困難などの急性症状を呈し、数時間後に肺水腫(すいしゅ)をおこして死亡する。用途としては、ポリウレタンの原料となるイソシアン酸エステルRNCOの合成、そのほか染料、医薬品、除草剤、合成樹脂その他各種有機化合物の合成原料である。

[守永健一・中原勝儼]


ホスゲン(データノート)
ほすげんでーたのーと

ホスゲン
COCl2
式量98.9
融点-128℃
沸点8.2℃
比重1.435(測定温度0℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ホスゲン」の意味・わかりやすい解説

ホスゲン
phosgene

化学式 COCl2 。塩化カルボニル,オキシ塩化炭素ともいう。炭酸酸塩化物と考えられる化合物で猛毒。融点-128℃,沸点8℃。実験室では沸騰四塩化炭素に発煙硫酸を滴下すると得られる。アンモニアと反応して尿素を,また第三アミンの存在下アルコールと反応してクロルギ酸エステルを生じる。代表的な窒息性毒ガスで,吸引すると催涙,くしゃみ,呼吸困難などの急性症状を呈し,数時間後に肺水腫を起して死にいたる。

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