日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホスゲン」の意味・わかりやすい解説
ホスゲン
ほすげん
phosgene
カルボニルの塩化物で、正式名は塩化カルボニル。一酸化炭素と塩素とを、活性炭を触媒として60~150℃で反応させると得られる。常温では無色の気体。ベンゼン、トルエン、四塩化炭素に易溶。水にはわずかに溶けて塩酸と二酸化炭素に加水分解する。
COCl2+H2O―→2HCl+CO2
反応性に富む物質で、水酸化アルカリ、金属酸化物、アンモニア、アミンなどいろいろな物質と反応する。熱すると分解して一酸化炭素と塩素になる。きわめて毒性が強く、戦時には毒ガスとして使用されたこともある。吸入すると催涙(さいるい)、くしゃみ、呼吸困難などの急性症状を呈し、数時間後に肺水腫(すいしゅ)をおこして死亡する。用途としては、ポリウレタンの原料となるイソシアン酸エステルRNCOの合成、そのほか染料、医薬品、除草剤、合成樹脂その他各種有機化合物の合成原料である。
[守永健一・中原勝儼]