日本大百科全書(ニッポニカ) 「イトハリゴチ」の意味・わかりやすい解説
イトハリゴチ
いとはりごち / 糸針鯒
threadfin spiny flathead
[学] Hoplichthys filamentosus
硬骨魚綱スズキ目ハリゴチ科Hoplichthyidaeに属する海水魚。駿河(するが)湾以南の太平洋と島根県以南の日本海、東シナ海、オーストラリアの西側と南東側に分布し、体は著しく縦扁(じゅうへん)して平たい。頭部には小さな棘(とげ)や骨質隆起があるが、頭部腹面の口角部の後方に棘がない。体には鱗(うろこ)がないが、体側に針状の棘がある骨板が並び、各骨板上に外後方へ向かう強い1棘(きょく)がある。吻(ふん)はへら状でやや長く、眼径よりも長い。両眼間隔は眼径より狭い。胸びれは長く、中央部の第4~6軟条は糸状に伸びる。胸びれの下部3軟条は太くて遊離する。体の背部は淡黄褐色で、腹面は淡色。雄では第2背びれのほとんどすべての軟条は糸状に伸長する。最大体長は30センチメートルぐらいになる。水深180~590メートルの砂泥底にすみ、底引網で漁獲される。近縁種のシマハリゴチHoplichthys fasciatusは両眼間隔域が眼径より広く、胸びれ上部の中央部軟条は伸長せず、胸びれ下部の遊離軟条は短くて、基部に鰭膜(きまく)が発達する。
[尼岡邦夫]