うろこ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「うろこ」の意味・わかりやすい解説

うろこ
うろこ / 鱗

魚類爬虫(はちゅう)類の体表のほとんど全体、鳥類、一部の哺乳(ほにゅう)類の体表を部分的に覆っている皮膚の変形物で、外敵外傷から体を保護している。発生学的には、外胚葉(がいはいよう)性の表皮の変化した鱗と、中胚葉性の結合組織から生じた真皮の変化したものとがあり、動物の種類によって形態的構造は多様である。

 魚類の鱗は真皮性で、一定の形態と配列があり、その数も種類によって一定である。たとえば、縦列数はサケでは150個、コイでは33個、フナでは27個である。魚鱗(ぎょりん)は形態の違いによって数種類に分類されている。楯鱗(じゅんりん)は板鰓(ばんさい)類(サメ、エイ)にあり、皮歯ともいう。楯(たて)の表面にあたる部分は皮膚に埋没しているが、楯の握りの部分は表皮から飛び出ていて、なでるとざらざらする。原始的硬骨魚類の鱗は肥厚していて、表面のギャノイン層と下層の硬骨層の厚い硬鱗は軟質類(チョウザメヘラチョウザメ)と全骨類(ボーフィン、ガーパイク)にみられ、化石魚類のパレオニスカス類の鱗もギャノイン層と硬骨層が厚く、中間にコスミン層があるのが特徴で、パレオニスカス鱗とよばれる。また、総鰭類(そうきるい)(シーラカンス類のラティメリア)には厚いコスミン鱗がある。魚類の鱗は進化とともに薄くなり、真骨類の骨鱗は、下層の硬骨層のみで構成され、全体が円い円鱗、露出部の縁が櫛(くし)歯状となる櫛鱗(しつりん)に分けられる。ハリセンボンの棘(とげ)は櫛鱗の後縁がとくに発達したものである。これらの鱗はつねに成長を続け脱落しないので、成長帯と休止帯の繰り返しにより同心円状の年輪ができる。これにより魚の年齢を推定できる。含有色素顆粒(かりゅう)には黒色(メラニン)、赤色(カロチノイド)、白色(グアニン)などがあり、色素細胞内のこれらの顆粒が神経やホルモンの支配下に集中または拡散するために体色変化がおこる。真骨類には、鱗が退化的で体表に粘液腺(せん)の発達するウナギギンポの類もいる。現生の無顎(むがく)類のヤツメウナギヌタウナギでは鱗が退化しているが、化石無顎類のほとんどは、頭胸部の大きなかぶとと、腹部と尾部の鱗で装甲されている。

 現生両生類のほとんどは鱗を欠くが、地質時代の切椎(せっつい)類には厚い装甲と鱗のあるものがあった。爬虫(はちゅう)類では、表皮の角質化した角鱗と、表皮と真皮の鱗が合してできているものとがある。角鱗は甲状腺ホルモンの影響により周期的に脱皮がおこる。鳥類の足やネズミの尾にある鱗も表皮性で、爬虫類の角鱗にあたる。哺乳類有鱗目のセンザンコウは全身が表皮性の鱗で覆われている。

[川島誠一郎]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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