改訂新版 世界大百科事典 「ウェンド人」の意味・わかりやすい解説
ウェンド人 (ウェンドじん)
西スラブ人の祖。ラテン語ではウェネティVeneti,ウェネディVenediと書かれる。ヨーロッパにはウェン,ウィンの語根を持つ地名が多く(ウィーンの古名ウィンドボナ,イタリアのウェネティアなど),この名を持つ民族が広く住んでいたと思われる。おそらく前2千年紀にバルト海沿岸に住んでいたイリュリア人ウェネティが南下してイタリアへはいった後,バルト海沿岸に移り住んだスラブ人が周辺の民族から先住者の名をとってウェネティ,ウェネディと呼ばれたのであろう。P.C.タキトゥスによればウェネディはゲルマン人に近く,カルパチ山脈とフィンランドの間に住むとあり,6世紀のヨルダヌスによればカルパチの北ビスワ川の流域にウェネティが住み,スクラベン人とアント人に分かれたとある。ウェネティは後に西スラブ人を形成するが,一部は東へ移り,東スラブ人の北部の種族を構成する。
→スラブ人
執筆者:國本 哲男
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