流域(読み)りゅういき(英語表記)drainage area

精選版 日本国語大辞典 「流域」の意味・読み・例文・類語

りゅう‐いき リウヰキ【流域】

〘名〙 降水が表流水(川)として集まる区域。また、川の流れに沿った両側の区域。河口に集中するすべての流水に対していう場合と、一部についていう場合とがある。〔英和外交商業字彙(1900)〕

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デジタル大辞泉 「流域」の意味・読み・例文・類語

りゅう‐いき〔リウヰキ〕【流域】

河川の流れに沿う地域。また、河川に流れ込む降水の降り集まる地域。集水地域。その河川の分水界に囲まれた地域。「流域面積」

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改訂新版 世界大百科事典 「流域」の意味・わかりやすい解説

流域 (りゅういき)
drainage area

地上に降った雨や雪は,一部は蒸発や蒸散により大気中に戻されるが,残りは地表面や土壌中を流下し,場合によっては地下水を涵養した後に,河川水となって海に排水される。ある河川の河口に着目したときに,その河口から排水される河川水のもとになっている降水のもたらされる範囲を流域という。流域は河口についてだけ定義されるものではなく,河川のある1地点(たとえば,合流点,ダムの建設地点,架橋地点)をとった場合には,その地点に流下してくる降水のもたらされる範囲が,その地点からみた流域となる。したがって,流域という代りに,集水域排水域と呼ぶこともある。たとえば,ダムの建設地点からみれば集水域という言葉がぴったりする。また,流域間の境界を分水界といい,分水界は一般には尾根の頂部となっている。

流域の自然的性質は地形的側面と水文学的側面からとらえられる。地形的側面については流域の面積や起伏量,河川網の形態などが,また,水文学的側面では流域内の降水量や河川の流量などが取り上げられる。流域面積は起伏のある流域を平面上に投影したときの面積であり,地図上で計測される。流域の起伏量は,分水界の最高高度と最下流部の高度の差でも表されるが,流域平均高度で示すことも多い。流域平均高度とは,流域内の最低高度より高い部分の体積を流域面積で割った商に,最低高度を加えた値である。流域内の河川の発達状況は河川密度で示される。河川密度とは,流域内の本川・支川を含めたすべての河川の延長を総計した値を,流域面積で割った商である。流域の異なる河川の流量を比較する場合には,流域面積が異なるので,単位面積当りに換算する。最も多く使用されるのは,比流量で,流量を流域面積で割った商で示す。また,流出量を流域面積で割って求める流出高や,流出高を平均降水量で割った商である流出率も,流域内の水文学的性質を示す重要な指標になる。

流域とは,元来は自然地域を指す術語であるが,社会的にも地域としての意味をもっている。離れて位置する集落が交流する場合,分水界を挟む集落間よりも,同一流域内にある集落間の方がはるかに結びつきやすい。それは,交通路としては,峠越えの道より舟運による河川の方がはるかに利便性が高いからである。また,自然的条件に根ざした生産と生活の様式が,上流山間部と下流の平野部とに独立して存在し,河川沿いに交流が行われていた。たとえば,上流の山間部で生産された木材などの商品が下流へと運ばれる一方,下流の平野部で生産された農作物などは上流に運ばれ,その接点で交換されてきたことはよく知られている。このように,上流域と下流域という結びつきも古くから存在した。

 しかし,近代の工業の発展や都市化が平野部に集中したために,流域内の関係は急激に変化してしまっている。一口に言えば,平野部への人口集中と,山間部の過疎化という変化である。平野部の都市の水需要を満たすため山間部にはダムが建設され,それが山間部の過疎化に拍車をかける。都市の木材の需要が森林の伐採に基因する山地の荒廃を促し,山間部の過疎化が森林管理の労働力を失わせて山地の荒廃を加速する。山間部の荒廃は降水を一挙に流下させて平野部に水害を発生させる。このように,平野部に発展した都市が,山間部に圧力を加え,自然破壊を伴う諸問題,いわゆる流域問題を発生させた。

 流域は水の循環という点からみると,一つのまとまった地域を構成しているので,流域問題も水の循環を通じてとらえられることが多い。たとえば,日本では,古くから治山治水という言葉があり,山地を管理することと,平野を水害から守ることが密接に結びついていることが示されていた。しかし,山間部と平野部からなる流域が一体となっていることを無視した開発が流域問題を発生させてきたのである。最近では,この点を反省し,山間部における森林の開発や保全土壌浸食の防止,洪水の制御や水資源の開発,平野部における開発,水害対策,その他流域内の景観の保全などを含めて,流域全体を一つの自然システムとしてとらえ,全体を統一的に管理しようとする流域管理の必要性が強くいわれている。とくに,第3次全国総合開発計画では,流域圏構想の名のもとに国土管理のあり方を考え直そうとしている。流域圏とは,河川の排水地域として流域をとらえたものではなく,流域内にみられる自然的・社会的構成要素を総合的にとらえたものを意味している。また,これらの要素を,どのように配置したり有機的に結合させるか,などの計画が流域圏構想である。したがってそれには,学際的な研究はもとより,諸官庁間の縄張を外した柔軟な協力体制が必要とされている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「流域」の意味・わかりやすい解説

流域
りゅういき
drainage basin

河川に流れ込む雨水(氷雪水も含む)が降り集まる地域をいい、集水域または排水域ともいう。流域は自然地理学の研究主題をなすが、人文地理学においても地域区分の単位をなすほか重要な基礎をなす。川の流下途上の地点をとった場合の流域は、上流からその測定地点までの間で雨水が流れ込む地域とされる。隣り合う川の流域の境界は、地形図上に分水界または流域界を記入することによって示される。こうしたことは温帯湿潤地帯における流域のことであるが、乾燥地域で川の流れが海まで届かないで、内陸の湖沼になっている場合の流域は「内陸流域」、外の海洋に注いでいる場合の流域は「外海流域」とよばれる。一般に流域は盆地地形をなしながら、下流に向かってしだいに高度を下げており、広い地域にわたる流域の場合には、いくつもの地名を冠してそれぞれ別称されている。自然地理学上の流域の研究は、1945年のホートンRobert Elmer Horton(1875―1945)の研究以後、トポロジー的取扱いが進み、水文学(すいもんがく)の発達に伴って流域の自然的特性が解明されつつある。

 たとえば、流域の広さを測るには諸法がある。流域は盆地状の曲面をなしているが、それを平面に投影して、求積器(プラニメーター)を使って地形図上を測定したり、また地形図上に方眼をかけてつくられる桝目(ますめ)の数を数えたり(方眼法)、また地形図上で流域に相当する部分の図形を切り抜いてその重さを量り、基準に使う図形の面積を切り取ったものとの重量を比較して求める(重量法)などである。これらによって得られた流域面積は河川の規模を示すことになるが、比流量(流域面積に対する流量)、流出高(流域面積に対する流出量)、流出率(平均降水高に対する流出高)等を算出し、河川研究の基本的資料とする。

[浅香幸雄・髙山茂美]

『飯田貞夫著『やさしい陸水学――地下水・河川・湖沼の環境』(1997・文化書房博文社)』『依光良三編著『流域の環境保護――森・川・海と人びと』(2001・日本経済評論社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「流域」の意味・わかりやすい解説

流域
りゅういき
drainage basin

分水嶺によって限られ,一河川水系に流水を供給する範囲の土地。降水が表流水となって集ってくる範囲全体をさす。流域の面積,形状,高度などは多様。最大流域面積はアマゾン川の 705万 km2,日本では利根川の1万 6840km2である。

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