お岩(読み)オイワ

デジタル大辞泉 「お岩」の意味・読み・例文・類語

おいわ〔おいは〕【お岩】

歌舞伎狂言東海道四谷怪談」の女主人公。毒を飲まされ、醜悪な形相に変じて悶死し、幽霊となって恨みを晴らす。

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朝日日本歴史人物事典 「お岩」の解説

お岩

4代目鶴屋南北作の歌舞伎狂言「東海道四谷怪談」(1825)のヒロイン。塩冶浪人の四谷左門の娘(この脚本は『仮名手本忠臣蔵』の裏話として作られているので役名もそれに応じ,塩冶判官高貞,高師直など『太平記』の世界の人物が,浅野内匠頭長矩,吉良上野介義央など,実在の人物を暗示している),民谷伊右衛門の妻だが,夫が仇討に参加しないばかりか,敵方の高師直の家来の伊藤家に婿入りし,伊藤から貰った毒薬でお岩の形相を変じたのでそれを恨んで死ぬ。夫は,小仏小平なる小者と密通したのを成敗したと称し戸板の裏表にふたりの死骸を打ちつけて川に流し,やがてお岩の亡霊が夫とその一統に祟りをする。このような戯曲のヒロインとしてのお岩の人物造型はもちろん作者の創作だが,題材としては実説もしくは巷説に基づくモデルがある。即ち,四谷左門町の御先手組下同心田宮又左衛門の娘お岩が嫉妬のため自殺,夫に祟ったという寛文(1661~73)ごろから伝わる怨霊譚,密通した旗本の妾と中間が戸板に打ちつけられ神田川に浮かんだという当時あった実際の事件などがそれであるが,そのほか小幡小平次,皿屋敷,累,一寸徳兵衛なども織り込まれており,そうした根の深い民俗性が,作品自体の価値と相まってお岩を怪談のヒロインのなかでも代表的な存在にしている。新宿区四谷左門町に現存する田宮神社とお岩稲荷には,上演に当たって関係者が参詣するのが恒例とされている。

(上村以和於)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「お岩」の解説

お岩 おいわ

歌舞伎の登場人物
4代鶴屋南北の代表作「東海道四谷怪談」の女主人公。文政8年(1825)初演。塩冶家(えんやけ)浪人民谷伊右衛門の妻。父の敵でもある夫に裏ぎられ,毒をのまされて凄絶(せいぜつ)な形相で狂死する。その後,幽霊となって伊右衛門をくるしめたあげく,とり殺す。

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世界大百科事典(旧版)内のお岩の言及

【東海道四谷怪談】より

…絵本番付によれば,初日は《忠臣蔵》の大序から六段目までと《四谷怪談》の序幕から三幕目隠亡堀の場まで,2日目はふたたび隠亡堀から始めて《忠臣蔵》の七,九,十段目になり,そのあとに《四谷怪談》四,五幕が続き,最後が《忠臣蔵》十一段目(討入)となっている。お岩・小平・与茂七を3世尾上菊五郎,伊右衛門を7世市川団十郎,直助を5世松本幸四郎。 (1)序幕(浅草境内の場,宅悦地獄宿の場,浅草裏田圃(たんぼ)の場) 高師直の家臣伊藤喜兵衛の孫娘お梅は民谷伊右衛門に恋慕している。…

※「お岩」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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