… 19世紀の印刷技術の躍進に伴ってジャーナリズムも発達し,もともと版画と関係の深かったカリカチュアも,新聞,雑誌などを舞台として広い影響を及ぼす。19世紀の前半ではフランスの《カリカチュールLa Caricature》(1830),《シャリバリ》(1832),イギリスの《パンチ》(1841),ミュンヘンの《フリーゲンデ・ブレッターFliegende Blätter》(1845),イタリアの《フィスキエットIl Fischietto》(1848)などの雑誌が発刊され,世紀末にはフランスの《リールLe Rire》(1894),《アシエット・オー・ブールAssiette au Beurre》(1901),ドイツの《ジンプリチシムス》(1894)などが重要な戯画の専門誌で,社会や政治への過激な,あるいは洗練された風刺やユーモアのある挿絵を載せた。19世紀中期にフランスで活躍した作家はグランビル,トラビエス,ガバルニ,H.モニエ,ジル,ドーミエらで,国王ルイ・フィリップは洋梨に記号化されて辛辣な風刺の的とされた。…
…石版画集《真昼のメタモルフォーズ》(1829)で獣頭人物や変身への偏愛を示し,名声を得た。30‐36年にドーミエらとともに《カリカチュール》誌や《シャリバリ》誌に寄稿,激しい政治風刺の先鋒に立つが,その本領は後期の奔放な空想力が生んだ作品群にある。銅版画集《もう一つの世界》(1844)は現実の秩序を外れた別世界の住民たちが軽快なデッサンで描かれ,その異様で怪奇なイメージにもかかわらず,幼児的な乾いた明るさが全体を支配している。…
…1832年より93年まで続いた。すでに1830年に政治風刺の週刊誌《カリカチュールLa Caricature》を創刊していた素描家フィリポンCharles Philipon(1806‐62)によって刊行され,グランビル,ドーミエ,ガバルニ,シャムCham(1819‐79)などの優れた素描家の手で風刺漫画が描かれた。とりわけ七月王政期に,反ルイ・フィリップのキャンペーンで幾度も検閲の対象となり,二月革命(1848)の世論をつくり上げるのに貢献した。…
※「カリカチュール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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