キャリア組(読み)きゃりあぐみ

知恵蔵 「キャリア組」の解説

キャリア組

キャリア公務員(career civil servants)とは、それを職業とする生涯職の公務員を意味する。だが、日本の公務員の間でキャリアという時、国家公務員採用試験I種に合格して採用された幹部候補を指す。日本の公務員制度は、入り口選別主義をとっており、I種試験合格者以外が、中央省庁本省の課長職以上の職に就くことは、ほとんどない。I種合格者以外の公務員は、ノンキャリア組と公務員の間では呼ばれる。省庁内における人事担当機関も異なっている。キャリア組の人事は大臣官房人事課、ノンキャリア組の人事は配属される局の総務課によって行われる。キャリア組は、幹部候補として、事務次官ないしは局長などの職に至るまで省庁内の多くの局を異動し、他の省庁に出向することもある。短期の異動はゼネラリスト養成のためだが、他方で、幹部の頻繁な異動にもかかわらず行政が安定しているのは、事務に精通したノンキャリア組が養成されているからである。

(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キャリア組」の意味・わかりやすい解説

キャリア組
キャリアぐみ
career

国家公務員採用試験I種に合格し,中央本省庁に採用された一般行政職公務員の俗称。それ以外の公務員をノン・キャリア組 non-careerと呼んでいる。両者の間には昇進スピード,最終ポストにおいて大きな差がある。最終ポストはキャリア組の平均が本省庁の中堅課長職,ノン・キャリア組は II種合格者が本省庁の課長補佐級,III種は上級係員である。幹部候補としてのキャリア組は1~2年単位で省庁内の多くの部局を異動したり,他の省庁へ出向したりしてジェネラリストとしてのトレーニングを積んでいく。幹部の頻繁な異動にもかかわらず行政を安定させているのは,スペシャリストとして長年同一部局にいるノン・キャリア組である。

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世界大百科事典(旧版)内のキャリア組の言及

【キャリア】より

…しかしもう少し狭く限定して,こうした職業上の地位移動の特定の型を指すこともある。たとえばキャリア組とか,キャリア・ウーマンといった表現がそれに当たる。キャリア組という言葉はもっぱら役人,それも主として国家公務員の世界で用いられてきた。…

【公務員】より


[現代における問題]
 ところで戦後の任用制度についてみると,採用は公開平等の競争試験によることになり,国家公務員法による試験は1949年から実施されている(公務員試験)。しかし今日でも,I種(旧上級)試験に合格し,本省庁に採用されたものが将来の幹部要員として特権的に扱われており,彼らはキャリア組と称され,II種(旧中級)およびIII種(旧初級)の合格者のいわゆるノン・キャリア組と昇進のスピード,最終ポスト等において区別されている。こうして昇任については,試験は実施されず,選考によって主として学歴と年功序列によって行われている。…

※「キャリア組」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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