精選版 日本国語大辞典 「行政」の意味・読み・例文・類語
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行政を英語のpublic administrationの訳語と想定すると、それは文字どおりには公共的仕事・事務の処理ないし管理を意味する。公共的事務とは、社会の全成員ないし多少とも多数の成員に関連し、公的費用負担において遂行される仕事・事務であり、処理ないし管理には、公共事務の実施および狭義の管理が含まれる。実施とは事務を実際に履行する活動群であり、狭義の管理とは、それらの執行をより円滑にし統一化し調整する活動群である。実施に必要な諸条件を準備する過程といってもよい。ある論者は、ここでいう狭義の管理に以下の10の活動(ないし、(1)を除く(2)~(9)の活動)を含ませている。すなわち、(1)二次的政策決定(事務の目的・内容に関する意思決定の補完)、(2)企画、(3)組織管理、(4)人事管理、(5)予算管理、(6)物品管理、(7)指揮、(8)伝達、(9)調整、(10)管制(コントロール)、である(手島孝(てしまたかし)(1933― ))。行政という社会現象をこのように規定すると、それが公共問題について第一次的政策決定(公共事務の目的・内容にかかわる基本的決定)である政治と密接な連関を有すると同時に、事務の実施と管理(狭義)である限りにおいて、企業その他の私経営private administrationとも一定の技術的共通性をもつことが理解されよう。
さて、ここで定義したような抽象的一般的行政概念に従えば、行政はおそらく人類社会の形成とともに始まり将来的に存続するであろうし、それがとる具体的形態も歴史的、空間的にさまざまであったし、さまざまでありうるであろう。マルクス主義者は、原始共産主義社会や将来の共産主義社会においては、社会の公共=共同事務は、社会成員全体によってか、その真正の公僕によって実施・管理されるが、国家を伴う階級社会においては、社会成員のうえにたち、それ自体の特殊利害をもつ、階級支配の特殊な権力機構=政府が、公共事務の目的・内容を決定すると同時にその管理をも独占しがちになり、かつ政府によって「公務」と規定される仕事の内実も、(1)もっぱら支配階級の特殊利益にかかわるものでありながら「公務」とされたものと、(2)直接的には支配階級の利害には結び付かない当該社会の維持・存続にかかわるものとに分裂し、しかも前者が後者に優越し、後者は前者に従属して歪曲(わいきょく)され、階級的帰結を伴って遂行される、と説いている。
[田口富久治]
市民革命を経たか「上からのブルジョア化」が進行した18世紀末から19世紀にかけての近代資本主義国家においては、ほぼ一様に、立法・行政・司法の三権分立が統治機構編成の一原則とされ、かつ国家の行政活動も国によって相異があるが――経済的後進国・後発国ほど上からの資本主義化を促進する必要から行政部が強大で、その経済・社会への介入活動が積極的であり(明治維新後の日本もその一典型で、それは「生まれながらの行政国家」と評され、public administrationは、初め「行法」、ついで「行政」=政治を行うこととして理解されたのが特徴的である)、経済的先進国では市民社会の自律性が強く、国家介入は最小限にとどめられた――、一般的には消極的なものにとどまった。ここから「司法でも立法でもない国家活動のすべてを行政という」類の定義(控除説)がとられ、また行政を法の関数とみ、行政の法的適合性のみを問題とする学派も現れた(その極限的理論化が純粋法学の、行政を一般的法規範を個別化する法的作用とみなす見解である)。
しかし20世紀に入るころになると、さまざまな理由から、国家の行政機能、とくに経済的・社会的機能が拡大し、それに伴って統治機構内での執行権ないし行政権(それは厳密にはその頂点としての内閣・大統領などの政治的執行部とその統轄下の行政組織=官僚制からなる)の優位の傾向が現れる(行政国家の台頭)。さらに第二次世界大戦後になると、現代国家の社会・経済過程への介入は全面的、恒久的、構造的なものとなり、とくに資本主義国家の行政は、資本蓄積と体制安定化(社会的調和の維持)のためのもっとも重要な手段となっている(国家介入主義ないし介入主義国家の成立)。そしてこのような情勢を反映して近時、たとえば行政法学の領域において、行政を「国家目的(あるいは公益)の直接的・具体的実現」と定義する学説も現れている。いずれにしろ、現代行政の特徴は、(1)経済空間の拡大に伴う国家空間の拡大・変化と国家行政機構=公共部門の機構的・機能的膨大化と複雑化、(2)国家行政機能の経済的機能を中軸とする再編成化と介入手段の多様化(とくに伝統的な規制などに加えて、計画化、契約化、公的資金介入などの誘導方式および公企業などの直接管理方式の比重の増大)、(3)執行権、とくに官僚制の政治的役割の増大と社会の矛盾を反映し、それぞれの行政顧客たる利益集団と「共生」関係を取り結ぶ行政諸部門間の亀裂(きれつ)や紛争の拡大などに求められよう。
[田口富久治]
『辻清明著『行政学概論 上巻』(1966・東京大学出版会)』▽『田口富久治著『行政学要論』(1981・有斐閣)』▽『手島孝著『行政概念の省察』(1982・学陽書房)』
(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…1962年池田勇人内閣下に臨時行政調査会が設置されて以来広く一般に流布した概念であるが,その内容はあいまいであるため,行政改革が企てられるたびごとに,行政改革とはいかなるものであるべきかが論争の種となっている。しかし,通常このことばにこめられている意味を整理すれば以下のようにいえよう。…
…行政学には広狭二様の意味がある。広義には,政府の行政に関する種々の研究の総称である。…
※「行政」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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