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公務員 こうむいん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

公務員
こうむいん

(1) 明治憲法下の官公吏とほぼ同義であるが,第2次世界大戦後特にこの言葉が用いられるようになった。その理由は,明治憲法 10条や官吏服務規律においては,天皇の官吏であることが強調されていたため,国民主権日本国憲法のもとでは,国民の公僕という意味を明確にする必要が痛感されたためである。公務員は国家公務員地方公務員に区別され,狭義では国家公務員法地方公務員法の規制を受ける一般職をさすが,広義ではこの法律が適用されない特別職も含まれる。 (2) 公務担当者の総称。法令上大別して,憲法上の公務員 (15条等) ,刑法上の公務員 (7条) ,公務員法上の公務員の3つの用法がある。公務員法上の公務員は,国家公務員と地方公務員,一般職公務員と特別職公務員,現業公務員と非現業公務員とに分類される。また,特例公務員とでも称すべき公務員がある (国家公務員法附則 13,地方公務員法 57) 。憲法 15条では,公務員が明治憲法下におけるがごとく「天皇の官吏」ではなく「全体の奉仕者」であり,公務員の選任権は「国民固有の権利」であるとしている。公務員は基本的人権の享有を妨げられないが,労働基本権を制限されることがある。

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百科事典マイペディアの解説

公務員【こうむいん】

広義には国または地方公共団体の公務に従事するすべての者。狭義には国会議員地方議会議員などは除かれる。国家公務員地方公務員の2種がある。日本国憲法は,国民主権主義を採用し,国民による公務員の選定罷免(ひめん)権を認めるとともに公務員を全体の奉仕者(国民の公僕(こうぼく))と定め,大日本帝国憲法下の〈天皇の官吏〉を否定した。
→関連項目戒告教育公務員行政書士公務員試験職権濫用罪選挙メリット・システム

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世界大百科事典 第2版の解説

こうむいん【公務員】

大日本帝国憲法下では,官吏公吏などの言葉が使われていたが,国民主権の日本国憲法下では,国民の公僕という意味をこめて公務員という言葉が主として使われるようになった。 実定法上,最も広い意味では,国または地方公共団体の公務に従事するすべての者をさす。したがって,広く国会議員や地方議会の議員も含まれる(日本国憲法15条2項に規定された公務員)。しかし,一般的に公務員という場合には,公選による議員を除いたそれ以外の公務を担当する職員をさす。

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大辞林 第三版の解説

こうむいん【公務員】

国または地方公共団体の職務を担当し、国民全体に奉仕する者。国家公務員と地方公務員とがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

公務員
こうむいん

広義においては、国または地方公共団体等の公務に従事することを職務とする者を総称していう。任命、嘱託、選挙その他いずれの方法で選任されたかを問わず、また立法、司法、行政のどの部門に属するかを問わない。この意味では、国家公務員法および地方公務員法にいう一般職および特別職の国家公務員および地方公務員はもちろん、国会議員や地方議会議員も含み、さらに公共企業体その他の公法人の役職員なども、公務に従事する限り公務員である。日本国憲法第15条にいう公務員はこの意味に解されている。
 しかし、一般に公務員という場合には、国会議員や地方議会議員を除き、それ以外の国または地方公共団体の公務を担当する者(国家公務員および地方公務員)をさし、また狭義においては、行政に従事する職員だけをさしていう場合もある。なお、従来は、広く官吏および吏員という語が用いられ、日本国憲法においても官吏・吏員の語を用いているところがある(憲法73条4号・93条2項)が、官吏・吏員という場合には、普通、公法上の身分的隷属関係にたち、国または地方公共団体の公務に従事することを本務とする者のみをさすのに対して、公務員という場合には、それよりも広く、たとえば、臨時的労務の提供をなすにとどまる者や、ほかに職業をもつことを許される顧問、参与、委員なども含まれる。
 ところで、旧憲法のもとでは、その公務員制度は、天皇に身分的に隷属した官僚的な官吏制度であった。すなわち、官吏は、すべて天皇の任官大権に基づいて任命される天皇の官吏であって(大日本帝国憲法10条)、「凡(およ)ソ官吏ハ天皇陛下及天皇陛下ノ政府ニ対シ忠順勤勉ヲ主トシ」(官吏服務規律1条)、天皇の名において人民を支配する特権階級であった。これに対して、国民主権主義を根本のたてまえとする現行憲法のもとにおいては、公務員は当然に国民の公務員であり、国民全体に奉仕すべき国民のための公務員でなければならない。憲法第15条に、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」(1項)とし、また「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」(2項)と規定しているのは、このことを示したものである。国家公務員法および地方公務員法を中心とする現行公務員法のねらいとするところも、このような憲法の精神にのっとった民主的な公務員制度を確立し、また同時に、現代の高度に技術化された複雑な行政をできるだけ能率的に遂行しうるような科学的な制度とすることにあるといえよう。[真柄久雄]

国家公務員

国の選任により、主として国の公務を担当する国の職員をいう。ただし、地方公共団体に勤務する職員であっても、健康保険法、職業安定法、道路運送法などの施行に関する事務に従事する都道府県の職員は、当分の間、なお官吏とされ(地方自治法附則8条)、また都道府県警察の職員のうち警視正以上の階級にある警察官は、一般職の国家公務員とされている(警察法56条1項)。[真柄久雄]
一般職と特別職
国家公務員法は、国家公務員の職を一般職と特別職に分け、特別職については同法の規定を適用せず、一般職についてだけ適用することとしている。現在、特別職には、大臣、副大臣、大使、公使、裁判官、国会職員、自衛官、失業対策事業労務者などの職が指定されており、これらの特別職以外のいっさいの職が一般職である(国家公務員法2条)。[真柄久雄]
職階制
一般職に属するすべての職(官職)を、その職務の種類および複雑さと責任の度に応じて分類整理する制度である。これを基礎として、職員の任用、給与、研修などの人事行政の運営を科学的、合理的なものにしようというのがねらいである。すなわち、まず、職務の種類の類似性を基準として、一般行政職、一般事務職、警察職、大学教育職、守衛、電話交換手などの職種に分類し、さらにその職務の複雑さと責任の度によって1級、2級などの職級に分類する。そして、そのように分類整理された同種同級の官職については、同一の資格要件を必要とするものとして同一の試験を行い、また同一の俸給表を適用するようにしようというのである(国家公務員法29条)。しかし、この職階制そのものは、現在、種々の事情から、まだ完全には実施されていない。[真柄久雄]
任用
職員の任用は、通常の場合は、採用、昇任、転任、配置換および降任のいずれか一つの方法で行われ、例外的に臨時的任用または併任の方法で行われる(国家公務員法35条・60条、人事院規則8-12)。いずれの方法による場合でも、情実を排して、能力本位の原則により、受験成績、勤務成績、その他の能力の実証に基づいて行われる(国家公務員法33条)。とくに採用は、競争試験を原則とし、人事院規則の定める受験資格を有するすべての国民に対して平等の条件で公開される(国家公務員法46条)。[真柄久雄]
権利・義務
国家公務員の分限上の権利としては、まず、法律または人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任、休職、免職されることはない権利を有する(国家公務員法75条)。そして、その意に反して降給、降任、休職、免職その他不利益な処分を受けた場合には、人事院に不服申立てをすることができる。また、財産上の権利として、給与、退職年金、退職手当、公務傷病に対する補償、旅費の支給などの実費弁償、官舎や官服などの実物の給貸与などを受ける権利を有する。
 国家公務員の義務については、服務の根本基準として、「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」(国家公務員法96条)とされているほか、具体的には、国家公務員法に、職務に専念する義務(101条)、法令および上司の命令に従う義務(98条1項)、秘密を守る義務(100条)、信用失墜行為の禁止(99条)などが規定されている。また、労働基本権の全部または一部が制限され(108条の2~108条の7、98条2項・3項)、所定の政治的行為が禁止され(102条)、さらに営利企業等との関係について制限を受けている(103条・104条)。義務の違反は、任命権者による懲戒処分の対象となる(82条以下)ほか、それらの義務違反の多くの場合について刑罰を科すべきものとしている(109条~111条参照)。[真柄久雄]

地方公務員

地方公共団体の選任により、主として地方公共団体の公務を担当する地方公共団体の職員をいう。ただし、地方公共団体に勤務する職員であっても、国家公務員としての身分を有する者のあることは、前に述べたとおりである。地方公務員の職は一般職と特別職に分けられ、知事、市町村長、教育委員会や選挙管理委員会などの委員などの職が特別職とされている。地方公務員法の規定は、特別職に属する職については適用されず、一般職に属する職についてだけ適用される。国家公務員の場合の人事院に相当する特別の人事機関として、人事委員会または公平委員会が設けられている(地方公務員法7条)ほか、職階制の採用(23条)、能力本位による任用制度(15条以下)、公務員としての権利義務などの点については、国家公務員の場合のそれと基本的にはほぼ同様の規定が置かれている。[真柄久雄]

準公務員

国または地方公共団体の公務員のほかに、公共企業体その他の公法人の役職員について、多かれ少なかれ公務員に準ずる法的取扱いがなされている場合がある。一般に、「法令により公務に従事する職員とみなす」とされる場合で、この場合に、とくに国家公務員法に準ずる規定を設けて、実質上は公務員に準ずる取扱いをすることもあるが、国家公務員法そのものの適用は受けないのが通例である(日本国有鉄道法、地方公営企業法など)。[真柄久雄]

諸外国の公務員

主要諸国の公務員制は、次のようになっている。[真柄久雄]
イギリス
この国において(国家)公務員civil serviceとは、その給与が議会の議決した予算から直接支払われる国王の奉仕者で、政治的または司法的機関に勤務する者を除き、かつ文官である者をいう。したがって、軍人、裁判官、政治的官職にある者、および公社の職員などは含まれない。(国家)公務員は、非現業公務員と現業公務員に分けられ、また、恒久公務員と非恒久公務員に区分されるほか、非現業の公務員については階級制がとられている。たとえば、行政クラス、執行クラス、書記クラス、補助書記クラスなど数十のクラスに分類し、さらに各クラスはそれぞれ数個の等級に分けられる。同一クラスに属する公務員は、任用、給与などに関して統一的に取り扱われる。人事行政機関としては、国王任命の6名の委員から構成される人事委員会が、任用試験および資格証明に関する事務を担当するほか、大蔵省人事管理局が公務員に関するその他の人事行政事務を統轄している。労働関係は、直接団体交渉により、またホイットレー委員会(政府側および組合側の同数で構成される)における協定および公務員仲裁裁判所による裁定によって処理される。なお、非現業の公務員とくに行政クラスや執行クラスの者については、政治活動が厳しく制限されているが、現業職員は、立候補を含めていっさいの政治活動が自由である。[真柄久雄]
アメリカ
連邦の文官公務員civil serviceは、軍人、裁判官および一定の政治的官職にある者を除いて、連邦政府の公務に従事するすべての者をいう。このうち行政府の文官公務員は、任用方式の別により、競争的任用職と除外的任用職とに大別されるが、前者については職階法により、きわめて精緻(せいち)な職階制が設けられている。中央人事行政機関としては、所属政党を異にする3名の委員からなる連邦人事委員会があり、任用、給与、能率、服務などに関して広範な権限を有している。労働基本権については、団結権、団体交渉権はいちおう認められているが、争議権は認められていない。また、政治的活動は、公務員法およびハッチ法によって、競争的任用職だけでなく、非競争的任用職をも含めて厳しく禁止されているが、最近、これを一部違憲とする裁判例が出ている。[真柄久雄]
ドイツ
連邦に勤務する職員には、官吏Beamte、雇員Angestellte、労務者Arbeiterの3種があり、このうち雇員および労務者は、連邦と私法上の契約関係にたつ職員である点において官吏と区別される。連邦官吏は、連邦もしくは連邦直轄の社団、営造物、財団に対して公法上の勤務関係および忠誠関係にたつ者で、裁判官および軍人を除いた者をいう。任用は、原則として試験採用制であり、条件付き官吏および見習官吏の期間を経て終身官吏となるが、終身官吏となれば身分保障がある。中央人事行政機関としては、連邦人事委員会が試験や研修などのほか訴願の決定を行うが、その他の人事行政事務はすべて連邦内務省が権限をもつ。官吏の労働基本権については、団結権は制度的に確立されているが、労働協約締結権や争議権は否定されている。雇員および労務者については、一般の労働者の場合とほとんど同様の権利が保障されている。また、連邦官吏の政治的活動は一定の制約を受けているが、官吏身分を保持したまま邦・市町村議会に立候補できるなど、比較的に緩やかな制約にとどまっている。[真柄久雄]
フランス
国の公務員agents publicsは、国が直接管理する公務に従事し、国または公施設によって雇用され、公法の条項が適用される者をいい、官吏titulairesと非官吏(契約職員contractuels)に大別される。官吏はさらに、1959年の官吏法の適用を受ける官吏と、同法の適用を受けない官吏とに区別される。裁判官、軍人および商工業的性格を有する中央官庁または公施設に勤務する職員などが非適用官吏であり、それ以外の官吏がすべて官吏法適用官吏である。適用官吏の職は、A(管理職、研究職)、B(一般事務職)、C(技能職)、D(労務職)の四つの職種に区分され、さらに、いくつかの職群に分類される。そして採用、昇進などはこの職群ごとに統一的に取り扱われる。人事行政機関としては、中央に官吏制度局(内閣官房)と官吏制度最高評議会があり、また、各省庁の内部機関として人事管理委員会および行政委員会(組合との協議機関)が置かれている。労働基本権については、団結権および労働協約締結権は認められているが、争議権については警察を除いて別段の規定はない。また、公務員の政治活動はかなり自由であり、若干の例外を除いて、公職選挙への立候補も認められている。[真柄久雄]
『鵜飼信成著『公務員法』新版(1980・有斐閣) ▽浅井清著『国家公務員法精義』新版(1970・学陽書房) ▽佐藤功・鶴海良一郎著『公務員法』(1954・日本評論社) ▽鹿児島重治著『逐条地方公務員法』(1980・学陽書房) ▽鵜飼信成・辻清明・長浜政寿編『公務員制度』(1956・勁草書房)』

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世界大百科事典内の公務員の言及

【政治家】より

…革命やクーデタによって政権についた人々は,いわば自選と互選の政治家である。日本やイギリスのような議院内閣制の国では,政治の表舞台は内閣と議会に限られており,高級公務員は政治過程において重要な役割を果たしていても政治家とは呼ばれないが,高級公務員が大統領の政治的任命によって選任されるアメリカ,公務員がその地位を保持しながら政策決定に公然と参加するフランス,ドイツ(旧,西ドイツ)については,一部の公務員は政治家とみなされている。みずから公然と政治権力の行使に参加する意思はないが,集票のマシーンを握ったりロビイングを通じて暗躍し,マス・メディアを通じてジャーナリスト,評論家,解説者として政治的影響力を行使する〈黒幕〉政治家も,政治を主たる生計の資としているかぎり政治家とみなせる。…

【争議権】より

…この禁止規定に違反する争議行為は,一律に民・刑事免責を失うものでなく,各規定の趣旨に照らして免責の有無が判断される。 公務員,国営企業等および地方公営企業の職員の争議行為は全面的に禁止される(国家公務員法98条,地方公務員法37条,国営企業労働関係法17条および地方公営企業労働関係法11条)。そして違反に対しては刑事罰・免職を含む重い制裁を科している。…

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